災害時・避難所で喫煙はどうなるか【2026】平時に知っておく備えとルールの考え方
目次
はじめに:本記事の前提と免責
本記事は、内閣府(防災担当)が公表している上記 2 つの資料、e-Gov 法令検索の健康増進法(https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)および健康増進法施行令(https://laws.e-gov.go.jp/law/414CO0000000361)、厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙。」(https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/)を一次情報源として、2026 年 8 月時点で確認できた範囲を整理したものです。特定の自治体の避難所運営マニュアルの内容は本記事では確認しておらず、個別の避難所について喫煙の可否を示すものではありません。災害時の運用は現地の判断が優先されます。本記事は喫煙を推奨するものではありません。避難所での喫煙を求める主張を行うものでもなく、共助・受動喫煙の防止・火気の安全という観点から、平時にできる準備を整理することを目的としています。
国の指針・ガイドラインに喫煙の個別の定めは確認できなかった
避難所の運営については、災害対策基本法(昭和 36 年法律第 223 号)第 86 条の 6 に生活環境の整備等が規定されており、これを受けて内閣府が指針とガイドラインを公表しています(出典: 内閣府「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412kankyokakuho.pdf)。両資料は、食料・トイレ・入浴・寝床の確保、要配慮者への支援、防火・防犯対策など、避難生活の質に関わる論点を幅広く扱っています。
その本文を 2026 年 8 月 18 日に確認したところ、喫煙・たばこ・分煙・受動喫煙に関する個別の記載は見当たりませんでした。これは「国が喫煙を認めている」という意味でも「禁じている」という意味でもありません。トイレやペットのように項目立てて扱われていない、という事実です。裏を返せば、避難所での喫煙の扱いは、自治体の避難所運営マニュアルや、現地で運営にあたる人たちが定める生活ルールに委ねられている、ということになります。
最初の手がかりは「その施設が何か」
避難所として指定されるのは、学校、公民館、体育館、公共施設などさまざまです。このうち学校については、健康増進法施行令第 3 条第 1 項第 1 号が「学校教育法第一条に規定する学校(専ら大学院の用途に供する施設を除く。)」等を第一種施設として挙げています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414CO0000000361)。第一種施設は敷地内禁煙が原則で、屋内に喫煙室を設けることはできません。
例外は、管理権原者によって区画され、喫煙できる旨の標識の掲示その他の受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた「特定屋外喫煙場所」がある場合に限られます(健康増進法第 28 条第 13 号・第 29 条第 1 項、出典: https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。学校に特定屋外喫煙場所が設けられているかどうかは施設によって異なります。つまり、「学校が避難所になっている」時点で、敷地内は基本的に吸えないと考えるのが出発点になります。
施設区分の全体像は 改正健康増進法の解説記事 に、標識の読み方は 喫煙所の標識・ピクトグラムの解説 にまとめています。
避難所の防火対策として国が示していること
内閣府の取組指針は「16 防火・防犯対策」の中で防火対策を扱っており、防火担当責任者の指定、石油ストーブ等からの出火防止、ゴミ集積場等に放火されないための定期的な巡回警備などを図ることを求めています。また、火災発生時に安全に避難するため、避難所の防火安全に係る遵守事項を出入り口等に掲示すること、避難所内で使用する毛布・シーツ等については状況に応じて燃えにくい素材のものを使用するなど適切な防火対策に努めることも記載されています(出典: 内閣府 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412kankyokakuho.pdf)。
ここで名指しされているのは石油ストーブですが、記載の趣旨は「火のもとを増やさない」「掲示された遵守事項に従う」という点にあります。多くの人が寝起きし、寝具や段ボールなど燃えやすいものが密集する空間では、火気の扱いが平時よりはるかに重い意味を持ちます。避難所の出入り口等に掲示された遵守事項は、その避難所で最も優先される情報だと考えて差し支えありません。
同じ空間に、煙を避けたい人が必ずいる
避難所には、高齢者、乳幼児、妊娠中の人、呼吸器に不安のある人など、さまざまな事情のある人が同時に生活します。屋外であっても、健康増進法第 27 条第 1 項は「何人も、特定施設等の喫煙禁止場所以外の場所において喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない」と定めています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。平時でも求められる配慮が、密集した避難生活ではより強く問われる、と考えるのが自然です。
また、喫煙できるエリアには 20 歳未満を立ち入らせてはならないと定められています(同法第 33 条第 5 項)。子どもが多く滞在する避難所では、この点も動線を考えるうえで無視できません。仮に運営側が喫煙場所を設ける判断をする場合でも、出入口・通路・炊き出し場所・寝床から離れているかどうかが、実務上の判断材料になります。
生活ルールは被災者自身がつくる、という枠組み
内閣府の取組指針には、住民による避難所運営組織の立上げや地域のコミュニティ維持に配慮した運営を支援すること、そして「被災者による自発的な避難所での生活のルールづくりを支援すること」と記載されています(出典: 内閣府 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412kankyokakuho.pdf)。喫煙の扱いも、この「生活のルール」の一部として、現地で決まることが想定される領域だと読めます。
この枠組みを知っておくと、行動の指針が立てやすくなります。運営が決めたルールがあるならそれに従う。まだ決まっていないなら、自分の判断で吸い始めるのではなく、運営に確認する。決めるプロセスに参加できるなら、火気の安全と受動喫煙の防止という 2 つの観点から意見を出す。いずれも「権利を主張する」のとは別の姿勢です。避難所は共同生活の場であり、誰かが我慢を強いられる形では長続きしません。
平時にできる備え
- 自分の地域の指定避難所がどこで、どんな施設か(学校か、公民館か、その他か)を確認しておく
- その施設が第一種施設に当たるかどうかを、健康増進法施行令の列挙と照らして把握しておく
- 自治体の防災担当課が公表している避難所運営マニュアルに、喫煙に関する記載があるかを平時に確認しておく
- 自宅周辺と避難所周辺の指定喫煙場所の位置を、地図で見ておく
- 普段から携帯灰皿を持ち歩く習慣にしておく。吸い殻の始末に困る場面は災害時ほど起きやすくなります
- 喫煙する人・しない人が同居する家庭では、避難したときにどうするかを平時に一度話しておく
避難所周辺の指定喫煙場所は、モットスイタイの喫煙所マップ で平時のうちに確認できます。災害時は施設の稼働状況が変わるため、地図の情報がそのまま使えるとは限りませんが、「もともとどこに設けられていたか」を知っているかどうかで初動は変わります。吸い殻の始末については 携帯灰皿の使い方 が参考になります。
実際に避難したときの行動
- まず、出入り口等に掲示されている遵守事項を読む。防火安全に関する掲示は最優先の情報です
- 掲示に喫煙に関する記載がなければ、自己判断せず運営者に確認する
- 学校など第一種施設が避難所になっている場合、敷地内は原則として吸えないと考える
- 運営が場所を指定している場合は、その場所以外では吸わない。時間帯の指定があればそれにも従う
- 寝床・炊き出し場所・物資置き場・出入口の近くは避ける。燃えやすいものが密集している場所では特に慎重に
- 吸い殻は必ず携帯灰皿か指定された容器へ。屋外であっても地面に落とさない
- 20 歳未満は喫煙できるエリアに立ち入れません。子どもを伴って移動しない
ルールが窮屈に感じられる場面もあるかもしれません。ただ、避難所での摩擦は生活全体に影響します。運営に確認してから動くという一手間が、結果的に自分の居場所を守ることにつながります。
おわりに:分からないことは、平時に調べておく
避難所での喫煙の扱いは、国の資料に個別の定めが確認できない以上、現地で確かめるほかありません。だからこそ、平時にできることが効いてきます。指定避難所がどの施設か、その施設の区分はどうか、周辺の指定喫煙場所はどこか。この 3 つを知っているだけで、災害時に迷う場面は減ります。日常の場面での考え方は 喫煙者のための実践マナー と 喫煙マナーの基本 に、家族との段取りは 非喫煙者が喫煙者と出かける日の段取り に、高齢の家族の入居先を検討する場面は 介護施設の喫煙ルールの確認方法 にまとめています。
災害に備えて喫煙まわりを整理する 5 ステップ
平時のうちに避難所と施設区分を調べ、災害時に迷わないための手順。共助・受動喫煙防止・火気の安全を軸に整理しています。
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ステップ 1
指定避難所と施設の種類を確認する
自治体の防災情報で、自宅と職場の最寄りの指定避難所を確認します。学校か、公民館か、その他の公共施設かによって、健康増進法上の扱いが変わるため、施設の種類まで押さえておきます。
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ステップ 2
施設区分を照らし合わせる
学校は健康増進法施行令第 3 条第 1 項第 1 号により第一種施設に位置づけられ、敷地内禁煙が原則です。避難所が第一種施設に当たる場合、敷地内では基本的に吸えないという前提で備えます。
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ステップ 3
自治体の避難所運営マニュアルを見ておく
自治体の防災担当課が避難所運営マニュアルを公表している場合、喫煙に関する記載があるかを平時に確認します。記載がない場合は、災害時に運営者へ確認する前提で覚えておきます。
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ステップ 4
周辺の指定喫煙場所を地図で見ておく
避難所の周辺に、もともとどこに指定喫煙場所が設けられているかを地図で確認します。災害時は稼働状況が変わりますが、位置を知っているかどうかで初動の判断が変わります。
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ステップ 5
携行品と家族の申し合わせを整える
携帯灰皿を非常持ち出し品に加えておきます。火気の扱いは避難所で最も慎重を要する部分のため、掲示された遵守事項に従う前提で準備します。喫煙する人としない人が同居する家庭では、避難したときの動き方を一度話しておきます。
よくある質問
Q.避難所でタバコは吸えますか?
A.一律の答えはありません。内閣府の「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」および「避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン(チェックリスト)」の本文を 2026 年 8 月 18 日に確認したところ、喫煙に関する個別の記載は見当たりませんでした(出典: 内閣府 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412kankyokakuho.pdf , https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412hinanjo_guideline.pdf)。扱いは自治体の避難所運営マニュアルと現地の運営ルールによって決まります。現地では掲示と運営者への確認が基本です。
Q.学校が避難所になっている場合はどうなりますか?
A.学校は健康増進法施行令第 3 条第 1 項第 1 号により第一種施設に位置づけられており、敷地内禁煙が原則です(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414CO0000000361)。例外は、区画され標識の掲示などの措置がとられた「特定屋外喫煙場所」がある場合に限られます(同法第 28 条第 13 号)。設けられているかどうかは施設によって異なります。
Q.避難所の火気のルールはどこで確認できますか?
A.内閣府の取組指針は、火災発生時に安全に避難するため、避難所の防火安全に係る遵守事項を避難所の出入り口等に掲示することを求めています(出典: https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412kankyokakuho.pdf)。したがって現地では、出入り口等の掲示が最優先の情報になります。防火担当責任者の指定や、石油ストーブ等からの出火防止といった対策も同指針に記載されています。
Q.喫煙者として、避難所ではどう振る舞えばよいですか?
A.まず掲示された遵守事項を読み、記載がなければ自己判断せず運営者に確認するのが基本です。運営が場所や時間帯を指定している場合はそれに従い、寝床・炊き出し場所・物資置き場・出入口の近くは避けます。吸い殻は必ず携帯灰皿か指定された容器へ入れてください。喫煙できるエリアに 20 歳未満を立ち入らせることはできません(健康増進法第 33 条第 5 項)。
Q.平時にできる備えは何ですか?
A.自分の地域の指定避難所がどの施設かを確認し、その施設が第一種施設に当たるかを把握しておくこと、自治体が公表している避難所運営マニュアルに喫煙に関する記載があるかを見ておくこと、避難所周辺の指定喫煙場所の位置を地図で確認しておくこと、携帯灰皿を持ち歩く習慣をつけておくことの 4 点が現実的です。家族間で事前に話しておくことも役に立ちます。
