喫煙所マークの種類と意味 - JIS規格・ISO規格・自治体ピクトグラム完全ガイド 2026
目次
喫煙所マークの歴史と 3 系統の整理
街なかで「喫煙所」「禁煙」「分煙」を表すマークを目にする機会は増えていますが、実は単一の「公式マーク」があるわけではありません。日本で運用されている喫煙関連のマークは、規格・法令・運用主体の違いから、おおよそ次の 3 系統に分かれます。
- (1) JIS Z 8210 案内用図記号と、その国際整合規格である ISO 7001 公共情報シンボル:駅・空港・公共施設で広く使われる「灰皿にタバコ+煙」の汎用ピクトグラム。
- (2) 改正健康増進法(2020 年 4 月 1 日全面施行)で掲示が義務化された屋内喫煙室の標識:喫煙専用室・加熱式たばこ専用喫煙室・喫煙目的室・喫煙可能室の 4 種類。標準デザインは厚生労働省が公表。
- (3) 自治体の路上喫煙禁止・歩きたばこ禁止条例で使われる独自ピクトグラム:千代田区・渋谷区・大阪市など、自治体ごとに表現が異なる。
本稿ではこの 3 系統に加えて、ほぼ必ず併用される「20 歳未満立入禁止」マーク、色のルール、混同しやすい「禁煙マーク」「分煙マーク」の使い分けまで整理します。
JIS Z 8210「案内用図記号」と喫煙所マーク
JIS Z 8210 は経済産業省所管の日本産業規格(旧・日本工業規格)で、駅・空港・観光地など公共空間で使う案内用図記号(ピクトグラム)を定めた規格です。日本規格協会(JSA)が編集を担い、2002 年に最初の規格制定、その後 2017 年・2020 年・2022 年と改正されてきました。
喫煙所のピクトグラムは、JIS Z 8210:2017 改正で「SYMBOL 51120 喫煙所」として正式に規定されています。図柄は「斜めに描いたタバコ 1 本から煙が立ち上る」シンプルな線画で、長辺が縦横どちらでも使用可能です。国土交通省「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」の案内用図記号の章でも、同じ JIS 図記号が採用されています。
- 規格番号: JIS Z 8210 案内用図記号
- 喫煙所マークの番号: SYMBOL 51120(2017 年改正以降)
- 所管: 経済産業省/日本規格協会(JSA)
- 主な用途: 駅・空港・観光案内所・大規模商業施設の館内案内図、誘導サイン
- 出典: 日本規格協会 JSA Group Webdesk(https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+Z+8210:2017+SYMBOL+51120)
- 出典: 国土交通省 バリアフリー:案内用図記号(JIS Z 8210)(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000145.html)
なお JIS Z 8210 はあくまで「案内」のための図記号で、法令上の喫煙可否を示すものではありません。施設として喫煙可能かどうかは、後述の改正健康増進法に基づく標識で確認します。
ISO 7001 国際標準と喫煙ピクトグラム
ISO 7001 は ISO(国際標準化機構)が定める「公共情報のための図形記号(Graphical symbols — Registered public information symbols)」の国際標準です。2007 年版(ISO 7001:2007)から最新の 2023 年版(ISO 7001:2023)まで改訂を重ね、国際空港や鉄道駅で世界共通の案内ピクトグラムを提供しています。
喫煙所マークは ISO 7001 の Public Facilities(公共施設)カテゴリに登録され、灰皿の上で点火されたタバコから煙が立ち上る図柄で表現されます。JIS Z 8210 の喫煙所マークは ISO 7001 の同義シンボルと整合がとられており、国内外の旅行者がどちらを見ても意味が通じるよう設計されています。
- 規格: ISO 7001 Graphical symbols — Registered public information symbols(最新は 2023 年版)
- カテゴリ: Public Facilities(PF)
- 所管: ISO(国際標準化機構)
- 出典: ISO 7001:2023 概要(https://www.iso.org/standard/77442.html)
- 出典: ISO Online Browsing Platform(https://www.iso.org/obp/ui/#iso:grs:7001:PI_PF_001)
ISO 7001 は記号の意味(伝達すべきメッセージ)を定めるものであり、各国はその意味を保ったうえで自国の規格(日本の JIS、ドイツの DIN など)に合わせて図柄を採用します。日本では JIS Z 8210 がこれに対応します。
改正健康増進法(2020 年 4 月全面施行)で統一された 4 種の喫煙室マーク
2018 年に成立し 2020 年 4 月 1 日に全面施行された改正健康増進法では、屋内を原則禁煙としたうえで、例外的に喫煙が可能な部屋・施設に「種類に応じた標識」の掲示を義務付けました。標準デザインは厚生労働省の特設サイト「なくそう!望まない受動喫煙。」で PDF/PNG として無償公開されており、店舗・オフィス・宿泊施設はこれをそのまま掲示することが想定されています。
法的に区別される喫煙室は次の 4 種類で、それぞれ施設入口と部屋入口の両方に標識を掲示する義務があります(出典: 厚生労働省「改正法のポイント」https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/、厚生労働省「標識の一覧」https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/sign/)。
- 喫煙専用室:紙巻きタバコ・加熱式タバコの両方を吸えるが、飲食は不可。第二種施設(オフィス、事業所、ホテルのロビー等)に設置可能。
- 加熱式たばこ専用喫煙室:加熱式タバコのみ可。紙巻きタバコは吸えない。法施行時点では飲食が可能(指定たばこ専用喫煙室)。マーク上では煙を点線で描き、ボタン状の図柄を組み合わせることで通常の喫煙所マークと区別する。
- 喫煙目的室:「公衆喫煙所」「たばこ販売店(出張販売を伴う対面販売を主目的とする店舗)」「シガーバー」など、喫煙を主目的とする施設に設置できる部屋。紙巻き・加熱式ともに可。
- 喫煙可能室:客席面積 100 ㎡以下、資本金 5,000 万円以下、2020 年 4 月 1 日時点で営業していた中小・既存飲食店のみ設置可能な経過措置のための部屋。
いずれの標識にも「20 歳未満の方は立ち入れません」の文言と専用マークが必ず併記されます。20 歳未満は喫煙目的の有無にかかわらず、従業員であっても室内に立ち入ることができません(出典: 厚生労働省「改正法のポイント」)。
加熱式タバコ専用喫煙室マークの読み方
改正健康増進法で新設されたマークのなかで、最も誤読が多いのが「加熱式たばこ専用喫煙室」のマークです。デザイン上の特徴は次のとおりです。
- 従来の喫煙所マーク(JIS Z 8210 SYMBOL 51120)と同じく、タバコ 1 本を斜めに配置するが、上部の煙の表現が「点線」になっている。
- タバコの基部にボタン状の図柄が描かれ、加熱式デバイスの操作部を想起させる。
- マーク内またはマーク横に「加熱式たばこ専用喫煙室」「指定たばこ専用喫煙室」など、施設種別を明示する日本語が併記される。
- 紙巻きタバコは持ち込み不可。標識を見たユーザーは「自分のタバコがこの部屋で吸えるか」を必ず確認する。
紙巻きタバコの方が、加熱式タバコ専用喫煙室を「普通の喫煙所」と勘違いして入室すると違反になります。逆に、紙巻きタバコ用の喫煙専用室に加熱式タバコを持ち込むことは可能です。マークと表示の細部まで確認する習慣をつけると安全です(出典: 厚生労働省「改正健康増進法で掲示が義務づけられる『標識』」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/201904_00015.html)。
喫煙可能室・喫煙目的施設のマークの違い
「喫煙可能室」と「喫煙目的施設」のマークは似ていますが、利用者から見ると意味合いがかなり異なります。
- 喫煙可能室:あくまで「既存特定飲食提供施設」(客席面積 100 ㎡以下・資本金 5,000 万円以下・2020 年 4 月 1 日時点で営業)の経過措置。店舗全体または一部の客席で喫煙可能であることを示す。新規開業店や大手チェーンには適用されない。
- 喫煙目的施設:「公衆喫煙所」「シガーバー」「たばこ販売店(出張販売を主目的とする対面販売店)」など、そもそも喫煙を主目的として営業している施設の標識。
- どちらも 20 歳未満(従業員含む)立入禁止。
- マーク自体のシルエットは喫煙専用室マークに近いが、室/施設の種別名が必ず併記される。
なお標識には大きさ・配色の細かな指定はなく、識別しやすさが重視されています。厚生労働省の公式標識をそのまま使用するのが最も誤解の少ない方法です(出典: 厚生労働省「標識の一覧」https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/sign/)。
「20 歳未満立入禁止」マークの併用
改正健康増進法の喫煙室標識には、必ず「20 歳未満立入禁止」のマーク(年齢制限ピクトグラム)が併用されます。これは入店・入室時点での年齢確認義務を施設管理者に課すもので、たとえ喫煙を目的としていなくても、20 歳未満は中に入れません。
- マーク表記: 「20 歳未満の方は立ち入れません」「Persons under 20 are not allowed」など多言語の併記が推奨される。
- 対象: 客・従業員を問わず 20 歳未満すべて。配膳・清掃の従業員も同様。
- 出典: 厚生労働省「改正法のポイント」(https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)
- 出典: 厚生労働省「改正健康増進法に基づく喫煙室の類型」(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000340887.pdf)
駅や空港の公衆喫煙所でも、出入口にこの 20 歳未満立入禁止マークが大きく掲示されていることがあります。家族連れで観光する場合、喫煙者だけが喫煙所に立ち寄り、未成年の家族はマーク外で待つというのが原則です。
自治体独自のピクトグラム例(千代田区・渋谷区・大阪市)
健康増進法は「屋内」のルールを定める法律です。屋外の路上喫煙・歩きたばこは、自治体が独自に条例で規制しており、それぞれ独自のピクトグラム・路面表示・ステッカーを採用しています。代表的な 3 自治体を見てみましょう。
- 千代田区:日本で最初に「歩きたばこ・路上喫煙」を条例で禁止した自治体(2002 年「千代田区生活環境条例」)。区内全域が路上禁煙地区で、違反者には 2,000 円の過料。歩道や路面に「タバコに斜線」のステッカーや路面表示が貼られる。出典: 千代田区生活環境条例(https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/machizukuri/sekatsu/jore/jore.html)。
- 渋谷区:「渋谷区分煙ルール」のもと、路上禁煙地区を指定。歩道や路面にステッカー・サインを設置。出典: 渋谷区よくある質問「街に禁煙の路面表示、ポスターやステッカーを見かけました」(https://dcp.city.shibuya.tokyo.jp/ctz/s/faq/faq-000002670)。
- 大阪市:2025 年 1 月 27 日から市内全域が路上喫煙禁止区域に。違反者には 1,000 円の過料。出典: 大阪市「路上喫煙が禁止されている区域について」(https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000503379.html)。
いずれの自治体も「タバコのピクトグラムに斜線(赤い斜線が一般的)」を組み合わせた禁煙マークを用いる点は共通ですが、デザイン・配色は自治体ごとに異なります。観光地では複数の自治体を跨ぐことが多いため、それぞれの足元・電柱・歩道上のサインに目を配ると安全です。
公衆喫煙所のマーク表示
駅前広場や公園内に設置される「公衆喫煙所」(屋根・パーティション付き、もしくは屋外のオープンタイプ)には、上記の 3 系統のマークが組み合わせて掲示されることが多いです。
- 入口・上部サイン: JIS Z 8210 の喫煙所マーク(SYMBOL 51120)でグローバルに「喫煙可」を案内。
- 壁面・室内: 改正健康増進法で定められた「喫煙目的室」標識(または「喫煙専用室」標識)と「20 歳未満立入禁止」マーク。
- 周辺: 自治体の路上喫煙禁止地区マーク(「ここ以外で吸わないでください」のメッセージ)。
- ベンチ・灰皿の有無、屋根の有無、加熱式タバコ対応か紙巻き対応かは、各喫煙所ごとに掲示内容を確認する。
近年は分煙仕様(紙巻きエリアと加熱式エリアを区切る)を採用する公衆喫煙所も増えており、それぞれにマークが分けて掲示されるケースもあります。
マークの色とデザインの目安
改正健康増進法の標識については、厚生労働省が「大きさ・色について特に指定はないが、利用者が容易に識別できることが重要」としています。実務上、次のような配色・運用が定着しつつあります。
- 喫煙可エリアのマーク:ブルー/グレー系の地色が多く、JIS Z 8210 のピクトグラム同様にシンプルな線画。「ここで吸えます」を伝える。
- 禁煙マーク:タバコの図柄に赤い斜線(円+斜線)を重ねた表現が国際的に共通。
- 加熱式専用:煙を点線で描く+ボタン状の図柄が目印。紙巻き専用と必ず見分ける必要がある。
- 路上喫煙禁止:自治体ごとに配色が異なるが、赤+黒+白の組み合わせが多く、足元の路面シールに採用されやすい。
- 20 歳未満立入禁止:人物のシルエットに斜線、もしくは「20」の数字と「立入禁止」の文言。
色そのものに法令上の拘束力はありませんが、施設管理者は「目立つこと」と「他施設との混同を避けること」の両方を意識して選んでいます。
「禁煙マーク」「分煙マーク」と「喫煙所マーク」の使い分け
「禁煙」「分煙」「喫煙所」の 3 つのマークは混同されがちですが、伝達するメッセージが異なります。
- 禁煙マーク: タバコ+赤い斜線。「この施設・区域では喫煙できません」。
- 喫煙所マーク: タバコのみ(斜線なし)。「ここで喫煙できます」。
- 分煙マーク: 法令上の正式な統一規格は存在しないが、慣用的にタバコの図柄を分割した表現で「喫煙エリアと禁煙エリアが区切られています」を意味する。改正健康増進法以降は「喫煙専用室/加熱式たばこ専用喫煙室/喫煙可能室/喫煙目的室」の標識が事実上の分煙表示として機能している。
飲食店の入口には「禁煙マーク」または改正健康増進法に基づく喫煙室標識が掲示されているのが通常です。標識がない、もしくは古い「分煙」「全席喫煙可」表示のままになっている店舗は、20 歳未満の入店可否や喫煙可否を口頭で確認すると確実です。
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よくある質問
Q.喫煙所マークの JIS 規格番号は?
A.日本産業規格 JIS Z 8210「案内用図記号」の 2017 年改正で、喫煙所マークは SYMBOL 51120 として規定されています。2022 年版(JIS Z 8210:2022)にも引き継がれています。出典: 日本規格協会 JSA Group Webdesk(https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+Z+8210:2017+SYMBOL+51120)。
Q.喫煙所マークの国際標準(ISO)は?
A.ISO 7001「Graphical symbols — Registered public information symbols」が国際的な公共情報シンボル規格で、最新版は 2023 年(ISO 7001:2023)。喫煙所マークは Public Facilities カテゴリに登録されています。出典: ISO 7001:2023 概要(https://www.iso.org/standard/77442.html)。
Q.改正健康増進法では何種類の喫煙室マークが定められた?
A.4 種類です。(1) 喫煙専用室、(2) 加熱式たばこ専用喫煙室(指定たばこ専用喫煙室)、(3) 喫煙目的室(公衆喫煙所・シガーバー・たばこ販売店)、(4) 喫煙可能室(既存特定飲食提供施設の経過措置)。標準デザインは厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙。」で公開されています(https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/sign/)。
Q.加熱式たばこ専用喫煙室のマークは紙巻きとどう違う?
A.通常の喫煙所マークが「タバコから実線の煙」で表現されるのに対し、加熱式たばこ専用喫煙室のマークでは煙が「点線」で描かれ、加熱式デバイスの操作ボタンを想起させる図柄が追加されています。紙巻きタバコは持ち込み不可です。出典: 厚生労働省「改正健康増進法で掲示が義務づけられる『標識』」(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/201904_00015.html)。
Q.20 歳未満は喫煙所に入れない?従業員でもダメ?
A.はい、20 歳未満は喫煙を目的としていなくても喫煙室・喫煙所に立ち入れません。配膳や清掃などのために働く従業員も同様です。喫煙室標識には必ず「20 歳未満立入禁止」マークが併記されます。出典: 厚生労働省「改正法のポイント」(https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。
Q.自治体の路上喫煙禁止マークは全国共通?
A.いいえ、共通の統一規格はありません。千代田区・渋谷区・大阪市など各自治体が独自にデザインしたピクトグラム・路面表示・ステッカーを採用しています。デザインは異なりますが「タバコの図柄+赤い斜線」という基本構成は共通です。出典: 千代田区生活環境条例(https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/machizukuri/sekatsu/jore/jore.html)、大阪市「路上喫煙が禁止されている区域について」(https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000503379.html)。
Q.「禁煙」「分煙」「喫煙所」マークの違いは?
A.禁煙マークはタバコの図柄に赤い斜線を重ね「ここでは吸えない」を意味します。喫煙所マークはタバコのみ(斜線なし)で「ここで吸える」を示します。分煙マークについては法令上の統一規格はなく、改正健康増進法以降は「喫煙専用室」「加熱式たばこ専用喫煙室」「喫煙可能室」「喫煙目的室」の 4 種標識が事実上の分煙表示として運用されています。
