介護施設・老人ホームでタバコは吸える?【2026】入居前に家族が確認すべき喫煙ルール
目次
はじめに:本記事の前提と免責
本記事は、e-Gov 法令検索の健康増進法(https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)および健康増進法施行令(https://laws.e-gov.go.jp/law/414CO0000000361)、厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙。」(https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/)を一次情報源として、2026 年 8 月時点の制度を整理したものです。個別の施設について喫煙の可否を判断するものではなく、入居者と施設の間の権利関係について法的な見解を示すものでもありません。判断に迷う場合は、施設の相談員・ケアマネジャー、自治体の介護保険担当窓口、必要に応じて専門家にご相談ください。健康影響については公的機関の情報をご確認ください。本記事は喫煙を推奨するものではありません。
まず押さえる:法律は施設を「第一種」と「第二種」に分けている
改正健康増進法は 2020 年 4 月 1 日に全面施行され、多数の人が利用する施設を大きく 3 つに分けています。受動喫煙により健康を損なうおそれが高い人が主として利用する施設として政令で定めるもの、および国・地方公共団体の行政機関の庁舎が「第一種施設」。それ以外で喫煙目的施設にも当たらないものが「第二種施設」です(健康増進法第 28 条第 5 号・第 6 号、出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。
第一種施設は敷地内が禁煙で、屋内に喫煙室を設けることができません。第二種施設は屋内が原則禁煙で、要件を満たして設けられた喫煙専用室などの中でのみ喫煙できます(同法第 29 条第 1 項)。介護施設の喫煙ルールを調べるときは、まず「その施設がどちらか」を確定させるのが出発点になります。
施設区分と喫煙室の種類の全体像は 改正健康増進法の解説記事 にまとめています。現地で見かける標識の読み方は 喫煙所の標識・ピクトグラムの解説 が参考になります。
介護老人保健施設・介護医療院は「第一種施設」=敷地内禁煙
健康増進法施行令第 3 条第 1 項は、第一種施設にあたる施設を号ごとに列挙しています。その第 12 号に「介護保険法第八条第二十八項に規定する介護老人保健施設及び同条第二十九項に規定する介護医療院」が明記されています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414CO0000000361)。同じ条の第 10 号には病院・診療所・助産所が、第 11 号には薬局が挙げられています。
したがって、いわゆる「老健」と介護医療院については、敷地内禁煙が法律上の原則です。屋内に喫煙室を設けることはできず、屋外についても、管理権原者が区画し、喫煙できる旨の標識の掲示その他の受動喫煙を防止するために必要な措置をとった「特定屋外喫煙場所」が設けられている場合を除き、敷地の中では喫煙できません(健康増進法第 28 条第 13 号)。特定屋外喫煙場所を設けるかどうかは施設の判断であり、設けていない施設もあります。
特別養護老人ホーム・有料老人ホームなどは「第二種施設」の整理になる
一方、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などは、健康増進法施行令第 3 条第 1 項の列挙に含まれていません。第二種施設は「第一種施設及び喫煙目的施設以外の施設」と定義されているため(健康増進法第 28 条第 6 号)、これらは第二種施設として、屋内は原則禁煙、要件を満たして設けられた喫煙専用室などの中でのみ喫煙が可能、という整理になります。
喫煙室には種類があり、それぞれ扱いが異なります。喫煙専用室は喫煙のみが可能で飲食はできません。加熱式たばこ専用喫煙室は加熱式たばこに限り可能で飲食もできます。いずれの喫煙室も、掲示すべき標識が定められています(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/smoking_room/)。同じ「老人ホーム」という言葉でも、施設が喫煙室を設けているかどうかで実態はまったく変わります。
居室の扱いは「法律上の枠」と「施設のルール」を分けて考える
健康増進法第 40 条第 1 項は、「人の居住の用に供する場所」および旅館業法に規定する旅館業の施設の客室の場所などについて、この節の規定を適用しないと定めています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。ただし、介護施設の居室がこの規定にあたるかどうかは、施設の種類や契約の形態によって考え方が分かれ得るところです。本記事では個別の判断は示しません。
そして実務上さらに重要なのは、法律が禁止していないことと、施設が認めることは別だという点です。入居契約や重要事項説明書、施設の運営規程で喫煙の場所や条件が定められていることがあり、火災予防の観点から施設が独自のルールを設けている場合もあります。「法律上は問題ないはず」という一般論で押し切るのではなく、その施設の書面に何が書かれているかを確認するのが確実です。
20 歳未満の立入禁止は、面会する家族にも関わる
喫煙専用室などの喫煙できるエリアには、20 歳未満の人を立ち入らせてはならないと定められています(健康増進法第 33 条第 5 項、出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。これは喫煙を目的としない場合も同じです(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/)。孫を連れて面会に行く場面では、子どもを喫煙室の前で待たせるといった対応も含めて、あらかじめ動線を考えておくと戸惑いません。
また、喫煙禁止場所以外の場所で喫煙する際には、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならないと定められています(同法第 27 条第 1 項)。施設の管理権原者にも、喫煙できる場所を定めるときは望まない受動喫煙を生じさせない場所とするよう配慮する義務があります(同条第 2 項)。屋外の喫煙場所が設けられている場合でも、居室の窓や通路との位置関係を見ておくと、入居後の生活の想像がつきやすくなります。
入居前・見学時に施設へ確認したい 8 項目
パンフレットやウェブサイトだけでは分からないことが多い領域です。見学のときに、次の項目を順に確認しておくと抜けが出にくくなります。
- その施設が健康増進法上どの区分にあたるか(介護老人保健施設・介護医療院か、それ以外か)
- 敷地内・屋内に喫煙できる場所があるか。ある場合は、その場所の種類(喫煙専用室か、加熱式たばこ専用喫煙室か、屋外の特定屋外喫煙場所か)
- 喫煙できる場所の位置と、居室・食堂・通路からの距離
- 喫煙できる時間帯や、職員の付き添いが必要かどうかといった運用上の条件
- ライター・マッチ・喫煙具の持ち込みと保管の扱い
- 入居契約書・重要事項説明書・運営規程に喫煙に関する条項があるか。ある場合はその内容
- 入居後に本人の心身の状況が変わった場合、喫煙の取り扱いがどう見直されるか
- 面会に来た家族が喫煙する場合の扱い(喫煙できる場所があるか、敷地外に出る必要があるか)
喫煙する本人が入居する場合も、喫煙しない本人が入居して家族が面会に来る場合も、確認する項目は共通です。答えは施設ごとに異なりますので、複数の施設を比較検討しているときは同じ質問を並べて聞くと違いが見えやすくなります。
面会に行く家族が気をつけたいこと
- 介護老人保健施設・介護医療院は敷地内禁煙が原則。特定屋外喫煙場所がない場合は、敷地の外の指定された場所まで移動する必要があります
- 「駐車場の隅なら」「建物から離れていれば」といった自己判断はしない。敷地内かどうかが基準になります
- 面会の前後に時間を取るなら、往復にかかる時間を先に見積もっておく
- 施設に戻る前に手を洗い、においが残りやすい外側の衣類の扱いを考えておく
- 路上喫煙を制限する条例がある地域では、敷地外でも喫煙できる場所が限られます。自治体の公式情報でご確認ください
面会の前後に立ち寄れる指定喫煙場所は、モットスイタイの喫煙所マップ で事前に確認できます。周囲への配慮の具体的な考え方は 喫煙者のための実践マナー、基本的なマナーは 喫煙マナーの基本 にまとめています。
おわりに:区分を知り、書面で確認する
介護施設の喫煙ルールは、「法律がどう分類しているか」と「その施設がどう運用しているか」の二層で決まります。前者は健康増進法と施行令を読めば分かり、後者は施設に聞くしかありません。両方をそろえて初めて、入居後の生活が具体的に想像できます。喫煙する家族と一緒に出かける場面での段取りは 非喫煙者が喫煙者と出かける日の段取り、災害時に避難所へ移る場面での考え方は 災害時・避難所での喫煙の考え方 でも整理しています。日本全体の喫煙環境の前提は 日本の喫煙所事情とマナーのガイド をご覧ください。
入居前に介護施設の喫煙ルールを確認する 5 ステップ
法律上の区分の確定から、書面での確認、面会時の動線の把握までを順に進めるための手順。
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ステップ 1
施設の種類を確定する
検討中の施設が介護老人保健施設・介護医療院か、それ以外かを確認します。前者は健康増進法施行令第 3 条第 1 項第 12 号により第一種施設で敷地内禁煙が原則、後者は第二種施設として屋内原則禁煙の整理になります。
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ステップ 2
喫煙できる場所の有無と種類を聞く
敷地内・屋内に喫煙できる場所があるかを施設に尋ね、ある場合は喫煙専用室・加熱式たばこ専用喫煙室・特定屋外喫煙場所のいずれかを確認します。掲示されている標識も現地で見ておきます。
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ステップ 3
見学時に位置関係を自分の目で見る
喫煙できる場所と、居室・食堂・通路・出入口との距離を実際に歩いて確認します。管理権原者には望まない受動喫煙を生じさせない場所とするよう配慮する義務があるため(健康増進法第 27 条第 2 項)、その配慮の実態を見る場面でもあります。
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ステップ 4
契約書・重要事項説明書の記載を確認する
入居契約書・重要事項説明書・運営規程に喫煙に関する条項があるかを確認します。喫煙具の持ち込みと保管、利用できる時間帯、付き添いの要否など、口頭の説明と書面が一致しているかを見ておきます。
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ステップ 5
面会に来る家族の動線を決めておく
面会する家族が喫煙する場合に、敷地内で対応できるのか、敷地外へ出る必要があるのかを確認します。敷地外へ出る場合は、指定された喫煙場所の位置と往復時間、地域の路上喫煙に関する条例を事前に調べておきます。
よくある質問
Q.老人ホームでタバコは吸えますか?
A.施設の種類と、その施設の運用によって異なります。介護老人保健施設と介護医療院は健康増進法施行令第 3 条第 1 項第 12 号により第一種施設とされ、敷地内が禁煙です(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414CO0000000361)。特別養護老人ホームや有料老人ホームなどは第二種施設の整理となり、屋内は原則禁煙で、要件を満たした喫煙室があればその中でのみ喫煙できます。実際に認めているかは施設ごとに異なるため、必ず施設にご確認ください。
Q.介護老人保健施設の敷地内に喫煙場所はありますか?
A.第一種施設は敷地内禁煙が原則ですが、管理権原者が区画し、喫煙できる旨の標識の掲示その他の必要な措置をとった「特定屋外喫煙場所」を設けている場合があります(健康増進法第 28 条第 13 号、出典: https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。設けるかどうかは施設の判断で、設けていない施設もあります。面会前に施設へご確認ください。
Q.居室でタバコを吸うことはできますか?
A.健康増進法第 40 条第 1 項は「人の居住の用に供する場所」等についてこの節の規定を適用しないと定めていますが(出典: https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)、介護施設の居室がこれにあたるかは施設の種類や契約の形態により考え方が分かれ得ます。加えて、法律が禁じていないことと施設が認めることは別です。入居契約書・重要事項説明書・運営規程の記載を確認し、施設に直接ご確認ください。
Q.孫を連れて面会に行くとき、喫煙室のそばで待たせても大丈夫ですか?
A.20 歳未満の人を喫煙専用室に立ち入らせてはならないと定められており(健康増進法第 33 条第 5 項)、喫煙を目的としない場合も同じ扱いです(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/)。喫煙室の中で待たせることはできませんので、待つ場所を分けて動線を考えておくと安心です。
Q.入居前の見学では何を聞けばよいですか?
A.その施設の健康増進法上の区分、喫煙できる場所の有無と種類、その位置と居室からの距離、利用できる時間帯や付き添いの要否、喫煙具の持ち込みと保管、契約書や運営規程の喫煙に関する条項、心身の状況が変わった場合の取り扱い、面会家族の扱いの 8 点を順に確認しておくと抜けが出にくくなります。
