ベトナムと日本で違う喫煙ルール 2026 — 電子タバコ全面禁止と「屋内原則禁煙」の考え方
目次
はじめに:本記事の前提と免責
本記事は、日本側は厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙。」(https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/)と e-Gov 法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)、ベトナム側は「Luật phòng, chống tác hại của thuốc lá」(法律 09/2012/QH13)の条文、国会決議 173/2024/QH15、および政令 90/2026/NĐ-CP に関する公的報道を一次情報源として、2026 年 8 月時点の制度を第三者の立場で整理したものです。特定の施設・店舗の喫煙可否について判断を示すものではなく、法的助言でもありません。両国とも法令改正や条例改正が行われるため、最新の内容は必ず公式情報でご確認ください。個別の事案については、それぞれの国の公的窓口や専門家にご相談ください。20 歳未満(ベトナムの規定は各法令で別途定められています)の喫煙は認められていません。本記事は喫煙を推奨するものではありません。
違い①:電子タバコ・加熱式たばこの扱いが正反対
最も大きな違いがここです。ベトナムでは決議 173/2024/QH15 により、電子タバコ(thuốc lá điện tử)と加熱式たばこ(thuốc lá nung nóng)が、製造・売買・輸入・保管・運搬に加えて「使用」まで含めて禁止されました。日本では、加熱式たばこは改正健康増進法のなかに「加熱式たばこ専用喫煙室」という独立した類型が置かれており、要件を満たして設けられたその室内では喫煙が可能とされています(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/smoking_room/)。
ここで注意したいのは、法律は国ごとに適用されるという点です。日本国内では日本の法令が適用されますが、ベトナム国内ではベトナムの法令が適用されます。日本で購入した加熱式たばこ製品をベトナムへ持ち帰る、あるいはベトナム国内で使用する行為は、決議 173/2024/QH15 が禁止する行為にあたります。「日本で買えるから大丈夫」という考え方はできません。
違い②:ベトナムは「場所を列挙」、日本は「施設の種類で分ける」
ベトナムの喫煙規制の基本は法律 09/2012/QH13 です。第 11 条(Điều 11)は、屋内かつ敷地内で完全に喫煙が禁止される場所として、医療施設(cơ sở y tế)、教育施設(cơ sở giáo dục)、児童の保育・養育・遊戯・娯楽専用施設、火災・爆発の危険が高い施設または区域を挙げています。さらに屋内で完全禁煙となる場所として、職場(nơi làm việc)、短期大学・大学・学院、公共の場所(địa điểm công cộng)が挙げられ、公共交通機関では自動車・航空機・電車が完全禁煙と定められています。
日本の改正健康増進法は、施設を「第一種施設」と「第二種施設」に分ける組み立てです。学校・病院・児童福祉施設・行政機関などの第一種施設は敷地内禁煙で、屋内に喫煙室等の設備を設けることができません。飲食店・事務所・ホテルなど多数の人が利用するその他の施設(第二種施設)は屋内が原則禁煙で、要件を満たした喫煙室を設けた場合に限りその室内で喫煙できます(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/)。「場所のリスト」ではなく「施設の種類」で決まるのがベトナムとの違いです。
違い③:飲食店のルール
ベトナムでは、飲食店は法律 09/2012/QH13 第 11 条 2 項の「công cộng(公共の場所)」に位置づけられ、屋内は完全禁煙が原則です。第 12 条(Điều 12)で「屋内は禁煙だが喫煙専用の場所を設けてよい」とされているのは、空港の隔離エリア(khu vực cách ly của sân bay)、バー・カラオケ・ディスコ・ホテルおよび観光宿泊施設(quán bar, karaoke, vũ trường, khách sạn và cơ sở lưu trú du lịch)、公共交通機関のうち船舶と鉄道(tàu thủy, tàu hỏa)に限られています。
日本には、これとは別の仕組みとして「喫煙可能室」があります。これは既存特定飲食提供施設(法律の要件を満たす、既存の小規模な飲食店)だけが設置できる経過措置で、この室内では喫煙も飲食も可能とされています。また、喫煙目的施設に限って設置できる「喫煙目的室」では、主食を除く飲食と喫煙が可能とされています(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/smoking_room/)。日本で「たばこを吸いながら食事ができる店」があるのは、この 2 つの類型があるためで、すべての飲食店で吸えるという意味ではありません。
違い④:喫煙できる部屋の「4 つの種類」を知っておく
日本で建物の中に入ったとき、標識に書かれた部屋の名前を読めると迷いません。厚生労働省が整理している 4 類型は次のとおりです(出典: https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/smoking_room/)。いずれの喫煙室も 20 歳未満は立ち入り禁止です。
- 喫煙専用室:喫煙は可能、飲食は不可。一般的な事業者が設置できます。標識は「喫煙専用室標識」。
- 加熱式たばこ専用喫煙室:加熱式たばこに限って喫煙が可能で、飲食も可能。一般的な事業者が経過措置として設置できます。標識は「加熱式たばこ専用喫煙室標識」。
- 喫煙可能室:喫煙も飲食も可能。既存特定飲食提供施設のみが経過措置として設置できます。標識は「喫煙可能室標識」。
- 喫煙目的室:喫煙が可能で、主食を除く飲食も可能。喫煙目的施設に限定して設置できます。標識は「喫煙目的室標識」。
- いずれの喫煙室に関しても 20 歳未満の方の立ち入りは禁止されています。
違い⑤:屋外・路上のルールは日本のほうが細かい
ベトナムの法律 09/2012/QH13 は、屋内と施設の敷地内を中心に規制を組み立てています。日本では、屋内の全国共通ルール(改正健康増進法)とは別に、市区町村がそれぞれの条例で屋外の路上喫煙を制限しています。この二層構造が、ベトナムから来た方が最も戸惑いやすい点です。
条例違反に対する過料の上限は、地方自治法 14 条 3 項で 5 万円以下と定められています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067)。実際の金額は自治体ごとに異なり、たとえば東京都千代田区は皇居を除く区内全域を路上禁煙地区とし、過料の額を当面 2,000 円としています。規制の対象となるたばこは紙巻きたばこおよび加熱式たばこです(出典: 千代田区 https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/machizukuri/sekatsu/jore/jore.html)。京都市は路上喫煙等対策強化区域内での路上喫煙に 1,000 円の過料を徴収しています(出典: 京都市 https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000027498.html)。金額も対象区域も自治体ごとに違うため、お出かけ前に各自治体の公式情報をご確認ください。
自治体ごとの過料の金額と対象区域は 自治体別 路上喫煙ルールと過料一覧 に整理しています。実際に過料を求められたときに現場で何が起きるのかは 路上喫煙で過料を求められたときの手続き をご覧ください。吸える場所を先に確認しておきたいときは モットスイタイの喫煙所マップ が使えます。
違い⑥:罰則の性質と金額
ベトナムでは、政令 90/2026/NĐ-CP(2026 年 3 月 30 日公布・2026 年 5 月 15 日施行)により、禁止された場所での喫煙に 20 万〜50 万ドン、電子タバコ・加熱式たばこの使用に 300 万〜500 万ドンの過料が定められたと報じられています(出典: Báo Nhân Dân https://nhandan.vn/nghi-dinh-xu-phat-manh-tay-voi-cac-vi-pham-lien-quan-den-thuoc-la-sap-co-hieu-luc-post962064.html)。金額の最新値は必ずベトナム政府の公式情報でご確認ください。
日本の路上喫煙に対する過料は、行政上の秩序罰として自治体が科すもので、実務上は 1,000 円から 2,000 円の設定が多く見られます。金額だけを比べると日本のほうが低く見えますが、日本の場合は駅前や繁華街で指導員が巡回しており、その場で告知され徴収されることがあります。金額の大小ではなく、「指定された喫煙所以外では吸わない」を徹底するのが確実です。
違い⑦:標識の掲示が日本ではルール化されている
日本では、喫煙できる設備を持った施設に対して、指定された標識の掲示が義務付けられています(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。裏を返せば、標識が出ていない屋内空間は禁煙と考えるのが基本です。ベトナムでも法律 09/2012/QH13 第 12 条 2 項が、喫煙専用の場所には見やすい位置への表示(biển báo)、吸い殻を入れる器具、消火設備、非喫煙区域と分離された部屋と換気システムを備えることを条件として求めています。標識を確認してから吸う、という行動そのものは両国に共通しています。
在留ベトナム人(技能実習生・留学生)が特に気をつけたいこと
- 寮・社宅・アパートの喫煙ルールは法律ではなく契約と管理規約で決まります。室内禁煙・ベランダ禁煙としている物件があるため、入居時に必ず確認してください。
- 職場の屋内は改正健康増進法により原則禁煙です。喫煙できるのは要件を満たした喫煙室の中に限られ、20 歳未満は立ち入れません。
- 「タバコ休憩」を直接定めた日本の法律はありません。休憩時間の使い方は勤務先の就業規則によります。判断に迷う場合は上司や人事にご確認ください。
- 日本では 20 歳未満の喫煙は法律で禁止されています(二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律/出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/)。18 歳・19 歳の留学生も対象です。
- 一時帰国の際に加熱式たばこ製品や電子タバコをベトナムへ持ち帰ることは、決議 173/2024/QH15 の禁止対象にあたります。
- 住んでいる市区町村の路上喫煙ルールは、引っ越すたびに変わります。転居したら自治体公式サイトで確認してください。
おわりに:迷ったら「標識を読む」「指定の場所を探す」
両国の制度は組み立てが違いますが、実際の行動としてやることは同じです。標識を読み、指定された場所を探し、そこ以外では吸わない。この 3 つに尽きます。標識に書かれた日本語の読み方は 喫煙所を日本語で聞くフレーズ集と標識の読み方 に、日本の制度全体の解説は 改正健康増進法の解説 にまとめています。訪日全般のルールは 訪日客向けの喫煙ガイド も合わせてご覧ください。
ベトナムから日本へ来る前に確認する 5 ステップ
出発前から到着後まで、両国の制度の違いでつまずかないための確認手順を順番に整理しました。
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ステップ 1
持って行く製品の種類を確認する
電子タバコ・加熱式たばこはベトナム国内で禁止対象です。日本入国時の免税範囲は品目ごとに定められているため、最新の数量は税関公式サイト(https://www.customs.go.jp/kaigairyoko/menzei.htm)でご確認ください。
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ステップ 2
滞在先の自治体の路上喫煙ルールを調べる
日本では市区町村ごとに条例が異なります。滞在する市区町村の公式サイトで、路上禁煙地区の範囲と過料の金額を確認しておきます。区域は路面標示や案内看板でも示されています。
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ステップ 3
標識に書かれた喫煙室の名前を覚えておく
「喫煙専用室」「加熱式たばこ専用喫煙室」「喫煙可能室」「喫煙目的室」の 4 つが法律上の類型です。標識がない屋内空間は禁煙と考え、標識を確認してから利用します。
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ステップ 4
到着後は最寄りの指定喫煙所を先に確認する
駅前や繁華街は規制が厳しく、指導員が巡回しています。移動を始める前に、地図で最寄りの指定喫煙所の場所と、そこまでの所要時間を把握しておくと安心です。
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ステップ 5
帰国前に持ち帰る品を見直す
日本で入手した加熱式たばこ製品や電子タバコをベトナムへ持ち帰る行為は、決議 173/2024/QH15 の禁止対象にあたります。出国前に荷物を確認し、ベトナムの税関公式情報も併せてご確認ください。
よくある質問
Q.ベトナムで電子タバコが禁止されたのはいつからですか?
A.2024 年 11 月 30 日に採択された国会決議 173/2024/QH15 により、2025 年から電子タバコ・加熱式たばこの製造・売買・輸入・保管・運搬・使用が全面的に禁止されました(出典: ベトナム通信社 https://chinhsachcuocsong.vnanet.vn/tu-nam-2025-viet-nam-cam-toan-dien-thuoc-la-dien-tu-va-nung-nong/53419.html)。最新の運用は必ずベトナム政府の公式情報でご確認ください。
Q.日本では加熱式たばこをどこでも吸えますか?
A.いいえ。日本でも屋内は原則禁煙です。加熱式たばこを吸えるのは、要件を満たして設けられた「加熱式たばこ専用喫煙室」など、法律で認められた喫煙室の中に限られます(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/smoking_room/)。屋外の路上についても、自治体の条例で禁止され過料の対象となる区域があります。
Q.日本で買った加熱式たばこをベトナムに持ち帰れますか?
A.決議 173/2024/QH15 は、加熱式たばこの運搬(vận chuyển)・保管(chứa chấp)・使用(sử dụng)を禁止の対象としています。したがって持ち帰る行為は禁止対象にあたります。詳細と最新の取扱いは、ベトナムの税関および所管当局の公式情報をご確認ください。
Q.ベトナムと日本で、飲食店のルールはどう違いますか?
A.ベトナムでは飲食店は「公共の場所」として屋内が完全禁煙とされ、喫煙専用の場所を設けられるのはバー・カラオケ・ディスコ・ホテル・観光宿泊施設・空港隔離エリア・船舶・鉄道に限られています(法律 09/2012/QH13 第 11 条・第 12 条)。日本では既存の小規模飲食店だけが経過措置として「喫煙可能室」を設けられます(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/smoking_room/)。個別の店舗については店頭の標識と店舗公式でご確認ください。
Q.日本の路上喫煙の過料はいくらですか?
A.自治体ごとに異なります。条例で科せる過料の上限は地方自治法 14 条 3 項により 5 万円以下と定められており(出典: e-Gov https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067)、実務上は 1,000 円から 2,000 円の設定が多く見られます。たとえば千代田区は当面 2,000 円(https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/machizukuri/sekatsu/jore/jore.html)、京都市は 1,000 円(https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000027498.html)です。訪問先の自治体公式サイトでご確認ください。
