大学キャンパスの喫煙所はなぜ消えた?【2026】全面禁煙化の法的な理由と学外で守るルール
目次
はじめに:本記事の前提と免責
本記事は、e-Gov 法令検索で公開されている学校教育法(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000026)・健康増進法(https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)・健康増進法施行令(https://laws.e-gov.go.jp/law/414CO0000000361)・健康増進法施行規則(https://laws.e-gov.go.jp/law/415M60000100086)・二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律(https://laws.e-gov.go.jp/law/133AC1000000033)の条文、厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙。」(https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/)、ならびに大学公式告知と報道を一次情報源として、2026 年 8 月時点の制度と実際の事例を第三者の立場で整理したものです。本記事で個別名を挙げているのは、公式告知または報道で確認できた事例に限られ、それ以外の大学について喫煙できる場所の有無を示すものではありません。在籍する大学の取り扱いは、必ず大学の公式案内でご確認ください。本記事は喫煙を推奨するものではありません。
大学が「第一種施設」になる法的な筋道
「大学は病院と違って未成年ばかりが使う場所ではないのに、なぜ敷地内禁煙なのか」という疑問はよく聞かれます。答えは、条文を 2 段階でたどると見えてきます。まず健康増進法第 28 条第 5 号イは、第一種施設として「学校、病院、児童福祉施設その他の受動喫煙により健康を損なうおそれが高い者が主として利用する施設として政令で定めるもの」を挙げています。ここで「政令で定めるもの」とされているので、次に健康増進法施行令第 3 条を見ることになります。
同条第 1 号は「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(専ら同法第九十七条に規定する大学院の用途に供する施設を除く。)」と書いています。そして学校教育法第一条が定義する「学校」には、幼稚園から高等学校までだけでなく、大学と高等専門学校が明記されています。この 2 つの条文がつながることで、大学は第一種施設に含まれるという結論になります。学生の年齢構成にかかわらず、「学校教育法第一条の学校」という形式的な区分で決まっている点がポイントです。
- 学校教育法第一条の「学校」= 幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学・高等専門学校
- 健康増進法施行令第 3 条第 1 号が、この「学校」を第一種施設として指定している
- 第一種施設は、特定屋外喫煙場所等以外のすべての場所が喫煙禁止(屋内外を問わない)
- 第二種施設(飲食店・事務所など)は「屋内」が原則禁煙で、屋外は法律上の喫煙禁止場所ではない
- 専門学校(専修学校)・各種学校は、20 歳未満の者が主として利用するものとして厚生労働省令で定めるものに限って第一種施設に含まれます
大学院だけの施設は扱いが異なります
施行令第 3 条第 1 号には、見落とされやすい括弧書きがあります。「専ら同法第九十七条に規定する大学院の用途に供する施設を除く」という部分です。学校教育法第九十七条は「大学には、大学院を置くことができる」と定めており、この規定を受けて、もっぱら大学院のために使われている施設は第一種施設から除かれます(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414CO0000000361)。
ただし、これは「大学院の建物なら自由に吸える」という意味ではありません。第一種施設から外れるということは第二種施設として扱われるということであり、その場合でも屋内は原則禁煙です。加えて、大学が独自の方針として全キャンパスを禁煙としていれば、法律上の区分にかかわらずその方針に従うことになります。学部と大学院が同じ建物を使っている場合、「専ら大学院の用途に供する施設」にあたるかどうかの判断も単純ではありません。実際の取り扱いは大学の案内でご確認ください。
大前提:18 歳・19 歳の学生は喫煙自体が法律で禁止されています
大学には 18 歳・19 歳の学生が多く在籍します。ここで必ず押さえておきたいのは、成年年齢が 18 歳に引き下げられた後も、喫煙が認められる年齢は 20 歳のままであるという点です。「二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律」第一条は「二十歳未満ノ者ハ煙草ヲ喫スルコトヲ得ス」と定めています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/133AC1000000033)。同法第五条は、20 歳未満の者に対しその自用に供するものであることを知って煙草または器具を販売した者を 50 万円以下の罰金に処すると定めており、販売する側にも罰則があります。
さらに、改正健康増進法のもとでは、20 歳未満の方は喫煙を目的としない場合であっても喫煙エリアに一切立ち入ることができません(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/)。これは施設側にも 20 歳未満を立ち入らせてはならない義務が課されているためで、「友人の付き添いで喫煙所に入る」ことも認められません。大学生活では学年や年齢が混在した集団で行動する場面が多いため、この点は特に注意が必要です。
全面禁煙化の実例:福岡大学の告知
大学の対応を具体的に確認できる例として、福岡大学の告知があります。同大学は敷地内全面禁煙を令和 2 年 6 月 1 日から暫定実施し、令和 4 年 1 月 1 日から正式実施しました。対象範囲については「紙巻きタバコはもとより、加熱式タバコ・電子タバコ・無煙タバコ等と称するいわゆる『新型タバコ』すべてを大学敷地内使用禁止とします」と明記しています(出典: https://www.fukuoka-u.ac.jp/news/21/12/13125926.html)。
この告知でとりわけ重要なのは、学外についても言及している点です。同大学は「大学敷地内での喫煙禁止はもちろん、大学敷地外での歩きタバコや喫煙所以外での喫煙は絶対に行わない等、受動喫煙防止に努めてください」と呼びかけています。また「『喫煙』は、学生および教職員へ推奨されるものではありません」とも記されています。つまり大学側は、敷地内を禁煙にすれば済むとは考えておらず、学外での行動まで含めて求めている、ということです。
例外の「特定屋外喫煙場所」とは何か
第一種施設であっても、法律は例外をひとつ認めています。健康増進法第 28 条第 13 号が定める「特定屋外喫煙場所」です。条文は「第一種施設の屋外の場所の一部の場所のうち、当該第一種施設の管理権原者によって区画され、厚生労働省令で定めるところにより、喫煙をすることができる場所である旨を記載した標識の掲示その他の厚生労働省令で定める受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた場所」と定義しています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。
その「厚生労働省令で定める措置」の中身は、健康増進法施行規則第 15 条第 2 項が定めています。同項が挙げるのは、(一)喫煙をすることができる場所である旨を記載した標識を掲示すること、(二)第一種施設を利用する者が通常立ち入らない場所に設置すること、の 2 つです(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/415M60000100086)。条文本体の「管理権原者によって区画され」と合わせると、①区画されていること ②標識が掲示されていること ③利用者が通常立ち入らない場所にあること、の 3 点が要件になります。
「利用者が通常立ち入らない場所」という要件は、キャンパスでは意外に厳しく効きます。学生の動線が密なキャンパスでは、この条件を満たす場所を確保しにくいためです。さらに、これは「設けなければならない」義務ではなく「設けることができる」という選択肢にすぎません。設けない判断も法律に沿った対応であり、多くの大学が全面禁煙を選んだ結果として、キャンパスから喫煙所が姿を消していきました。
喫煙所を廃止した後に何が起きたか:反面教師としての事例
喫煙所の廃止は、学内の問題だけでは終わらないことがあります。東京新聞の報道によると、明治大学駿河台キャンパスでは 2023 年 3 月末に喫煙所が廃止されました。同大学は改正健康増進法で学内禁煙が原則となったことを受けて受動喫煙防止措置を備えた屋外喫煙所を設置していましたが、2021 年度にコロナ禍で交流スペースを同じエリアに新設したことにより「確実な分煙が難しくなり、喫煙所の廃止が決まった」と説明されています(出典: 東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/265930)。
同じ報道では、キャンパス近くの飲食店経営者が「ここにも吸い殻がある。春ぐらいから目立つようになった」と述べ、客商売として周辺を清潔に保つ必要があるなかで迷惑を受けていると訴えたことが伝えられています。学生側からは、近くの公衆喫煙所が「満員で入れなければ路上で吸う学生もいる」という声や、大学の説明に対する不満も紹介されています。
この事例は、喫煙する学生にとって「だから路上で吸っても仕方がない」という話ではありません。むしろ逆で、学内に場所がないことが、そのまま周辺の商店や住民への迷惑に直結してしまった例として読むべきものです。吸い殻が目立てば、大学と地域の関係が悪くなり、公衆喫煙所そのものが撤去される方向に働くことすらあります。喫煙できる場所を残していくうえで、路上喫煙とポイ捨ては最も避けるべき行動です。
学外で守るべきルール
キャンパスを一歩出た先には、自治体ごとのルールがあります。多くの自治体が路上喫煙を禁止する条例を定めており、違反者に過料が科される場合があります。金額・対象区域・施行日は自治体ごとに異なるため、大学の所在地の公式情報を必ずご確認ください。大学の周辺は、通学路であると同時に、住宅・商店・保育施設などが混在する生活空間でもあります。
- 大学周辺の路上・歩道・公園の入口・店舗の軒先などで吸わない(私有地への無断立ち入りにもなり得ます)
- 自治体の路上喫煙禁止区域では過料の対象になる場合があります。区域と金額は自治体公式でご確認ください
- 吸い殻は絶対に投げ捨てない。携帯灰皿を用意し、持ち帰る
- 公衆喫煙所が混雑しているときは、空くまで待つか、時間をずらす。入れないからといって路上で吸わない
- 住宅・保育施設・病院の近くでは、正規の喫煙所であっても周囲への配慮を優先する
- 20 歳未満の方は喫煙も、喫煙エリアへの立ち入りもできません
キャンパスの外で正規に利用できる喫煙場所の位置は、通学前にあらかじめ把握しておくと、当日その場で探して路上に留まる事態を避けられます。位置の確認には モットスイタイの喫煙所マップ をご利用いただけます。自治体ごとの路上喫煙のルールと過料は 自治体別の路上喫煙と過料の解説、日常的なマナーの基本は 喫煙マナーの基本 にまとめています。
大学ごとに方針は異なります
ここまで法律の枠組みと具体的な事例を見てきましたが、実際の運用は大学ごとに異なります。特定屋外喫煙場所を設けているかどうか、加熱式たばこをどう扱うか、学外での行動についてどのような呼びかけをしているかは、それぞれの大学の学生便覧や公式サイトに書かれています。本記事は個別の大学について喫煙できる場所の有無を示すものではありません。在籍する大学、あるいは訪問する大学の公式案内でご確認ください。
おわりに:制度の理解が、周囲との摩擦を減らします
キャンパスから喫煙所が消えたのは、大学が独断で厳しくしたからではなく、学校教育法と健康増進法の条文がつながった結果です。同じ第一種施設である病院については 病院の敷地内禁煙の記事、行政機関の庁舎については 運転免許センターの喫煙ルールの記事、学生が利用する機会の多い自動車教習所については 合宿免許・教習所の喫煙ルールの記事 で整理しています。施設区分の全体像は 改正健康増進法の解説記事 もあわせてご覧ください。
大学生活で喫煙のトラブルを避ける 5 ステップ
大学が敷地内禁煙であることを前提に、学内外で周囲との摩擦を生まないための確認と行動の手順です。
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ステップ 1
自分の年齢と法律の線引きを確認する
喫煙が認められるのは 20 歳からで、成年年齢の 18 歳とは別の基準です。20 歳未満は喫煙も、喫煙エリアへの立ち入りもできません。友人の付き添いで喫煙所に入ることも認められていない点に注意します。
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ステップ 2
大学の公式案内で方針を確認する
学生便覧や大学公式サイトで、敷地内禁煙の範囲、特定屋外喫煙場所の有無、加熱式たばこの扱い、学外での行動に関する呼びかけを確認します。記載がなければ敷地内では吸えないものとして行動します。
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ステップ 3
キャンパス外の正規の喫煙場所を先に把握しておく
通学ルート上で正規に利用できる喫煙場所の位置を、あらかじめ地図で確認しておきます。その場で探し始めると、結果的に路上に留まってしまいやすいためです。混雑時に備えて複数の候補を知っておくと安心です。
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ステップ 4
混雑していても路上に流れない
公衆喫煙所が満員のときは、空くまで待つか時間をずらします。入れないからといって路上で吸えば、周辺の商店や住民への迷惑になり、喫煙所そのものが撤去される方向に働くこともあります。
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ステップ 5
吸い殻は必ず持ち帰る
携帯灰皿を用意し、吸い殻は投げ捨てず持ち帰ります。実際に、喫煙所が廃止された大学の周辺で吸い殻が目立つようになったという苦情が報じられています。地域との関係は、この一点で大きく変わります。
よくある質問
Q.大学に喫煙所がないのはなぜですか?
A.大学は学校教育法第一条の「学校」に含まれ、健康増進法施行令第 3 条第 1 号によって第一種施設に指定されているためです(出典: https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000026 、https://laws.e-gov.go.jp/law/414CO0000000361)。第一種施設では、健康増進法第 29 条第 1 項第 1 号により特定屋外喫煙場所等以外のすべての場所が喫煙禁止となり、第二種施設と違って「屋内」の限定がありません。
Q.18 歳や 19 歳の大学生でも喫煙は禁止ですか?
A.禁止です。成年年齢が 18 歳に引き下げられた後も、喫煙が認められる年齢は 20 歳のままです。「二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律」第一条が「二十歳未満ノ者ハ煙草ヲ喫スルコトヲ得ス」と定めています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/133AC1000000033)。20 歳未満は喫煙エリアへの立ち入りもできません。
Q.加熱式たばこや電子たばこならキャンパスで使えますか?
A.大学の告知では、紙巻きたばこと同様に敷地内での使用を禁止している例があります。福岡大学は「紙巻きタバコはもとより、加熱式タバコ・電子タバコ・無煙タバコ等と称するいわゆる『新型タバコ』すべてを大学敷地内使用禁止とします」と明記しています(出典: https://www.fukuoka-u.ac.jp/news/21/12/13125926.html)。取り扱いは大学ごとに異なるため公式案内でご確認ください。
Q.キャンパスに喫煙所が残っている場合、それは違法ではないのですか?
A.違法とは限りません。健康増進法第 28 条第 13 号は例外として「特定屋外喫煙場所」を認めており、管理権原者による区画・喫煙可能である旨の標識の掲示・利用者が通常立ち入らない場所への設置という 3 つの要件を満たせば設置できます(出典: 同法施行規則第 15 条第 2 項 https://laws.e-gov.go.jp/law/415M60000100086)。ただし設置は義務ではなく、設けない大学も多くあります。
Q.学内で吸えないので、大学の近くの路上で吸ってもよいですか?
A.いけません。多くの自治体が路上喫煙を禁止する条例を定め、違反者に過料を科しています(金額・区域は自治体ごとに異なるため公式情報をご確認ください)。大学側も「大学敷地外での歩きタバコや喫煙所以外での喫煙は絶対に行わない」と呼びかけています(出典: 福岡大学 https://www.fukuoka-u.ac.jp/news/21/12/13125926.html)。喫煙所廃止後に周辺で吸い殻の苦情が報じられた事例もあります(出典: 東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/265930)。
