施設の屋外喫煙所、どこに作る?【2026】健康増進法 27 条 2 項の配慮義務と設置の考え方
目次
はじめに:本記事の前提と免責
本記事は、e-Gov 法令検索の健康増進法(https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)および健康増進法施行規則(https://laws.e-gov.go.jp/law/415M60000100086)、厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙。」(https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)、厚生労働省の受動喫煙防止対策助成金のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html)を一次情報源として、2026 年 8 月 18 日時点で確認できた条文と記載を整理したものです。特定の施設の区分の該当性や、計画中の喫煙場所が要件を満たすかどうかの判断を示すものではありません。実際の設置は所管の保健所・都道府県等の窓口にご相談のうえ、必要に応じて建築・設備の専門家にご確認ください。本記事は喫煙を推奨するものではありません。
まず確認:自分の施設はどの区分か
屋外喫煙場所の話は、施設区分の確認から始まります。健康増進法第 28 条第 5 号は第一種施設を「多数の者が利用する施設のうち、次に掲げるもの」として、イに「学校、病院、児童福祉施設その他の受動喫煙により健康を損なうおそれが高い者が主として利用する施設として政令で定めるもの」、ロに「国及び地方公共団体の行政機関の庁舎(行政機関がその事務を処理するために使用する施設に限る。)」を挙げています。第 28 条第 6 号は第二種施設を「多数の者が利用する施設のうち、第一種施設及び喫煙目的施設以外の施設をいう」と定めています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。
厚生労働省の解説では、「学校・病院・児童施設等、行政機関、旅客運送事業自動車・航空機については、敷地内禁煙となり、屋内に喫煙室等の設備を設けることが出来ません」としたうえで、「屋外には、必要な措置が取られた場所に限り、喫煙場所の設置ができます」と説明されています。第二種施設については「多数の利用者がいる施設、旅客運送事業船舶・鉄道、飲食店等において、原則屋内禁煙となります」と整理されています(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。
第一種施設の「特定屋外喫煙場所」に求められる 3 つの要素
第一種施設の敷地内に屋外の喫煙場所を設ける場合、法律と省令が求めている内容は、条文を並べると次の 3 つに整理できます。
- 【区画されていること】法第 28 条第 13 号が「当該第一種施設の管理権原者によって区画され」と定めています。どこからどこまでが喫煙できる場所なのかが、物理的に見て分かる状態にすることが前提です
- 【標識の掲示】施行規則第 15 条第 2 項第 1 号「喫煙をすることができる場所である旨を記載した標識を掲示すること。」。同条第 1 項は、この掲示について「標識に表示すべき事項を容易に識別できるようにするものとする」と定めています
- 【利用者が通常立ち入らない場所であること】施行規則第 15 条第 2 項第 2 号「第一種施設を利用する者が通常立ち入らない場所に設置すること。」。施設の入口正面や、来訪者が必ず通る動線上は、この要件との関係で見直しの対象になります
そして法第 29 条第 1 項第 1 号は、第一種施設について、特定屋外喫煙場所と喫煙関連研究場所「以外の場所」を喫煙禁止場所としています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103 / https://laws.e-gov.go.jp/law/415M60000100086)。つまり第一種施設では、要件を満たした特定屋外喫煙場所を設けない限り、敷地内に喫煙できる場所は生まれません。
なお、屋外喫煙場所の広さ・高さ・囲いの構造・風速といった技術的な数値については、本記事では条文で確認できた範囲を超えて書いていません。個別の計画が要件を満たすかどうかは、所管の保健所・都道府県等の窓口にご確認ください。
第二種施設の屋外はどう扱われるか
飲食店・事務所・商業施設・ホテルなどの第二種施設について、法第 29 条第 1 項第 2 号は、喫煙専用室の場所と喫煙関連研究場所「以外の屋内の場所」を喫煙禁止場所としています。条文が「屋内の場所」と書いている以上、屋外がこの規定による喫煙禁止場所とされているわけではありません。「特定屋外喫煙場所」という制度自体、第 28 条第 13 号が「第一種施設の屋外の場所の一部の場所」と定義しているとおり、第一種施設についての仕組みです。したがって、第二種施設の屋外に喫煙場所を設ける場合に、第一種施設向けの 3 要件がそのまま法定要件として課されるわけではありません。
ただし「規制がないから自由に置いてよい」という話にはなりません。第 27 条第 1 項は「何人も、…喫煙禁止場所以外の場所において喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない」と定め、第 2 項は「特定施設等の管理権原者は、喫煙をすることができる場所を定めようとするときは、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならない」と定めています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。屋外に喫煙場所を置く判断そのものが、この第 2 項の適用場面にあたります。加えて、都道府県や市区町村が条例で独自の上乗せ規制を設けている場合があるため、計画段階で必ず所在地の自治体に確認してください。
場所を選ぶときに見るべき論点
「望まない受動喫煙を生じさせることがない場所」の具体化は敷地の形状によって変わります。実務で検討項目として挙がりやすいのは次の点です。第一種施設では、これに加えて「利用者が通常立ち入らない場所」という省令の要件を満たす必要があります。
- 出入口・エントランス・自動ドアからの距離。人が滞留する場所と、建物内へ空気が入る場所は分けて考える必要があります
- 給気口・換気設備の吸込口・窓の位置。建物側の設備図面と重ねて確認します
- 来訪者・利用者の主要な動線。通り抜けが必要な位置にあると、通常立ち入らない場所という要件とも、配慮義務とも折り合いが悪くなります
- 隣接する敷地・住戸・歩道との関係。自分の敷地の中だけで完結しない影響を検討します
- 20 歳未満が立ち入る可能性のある区域(保育・教育関係の施設、遊具、キッズスペース等)との距離
- 屋根・囲いの有無と、風の抜け方。周囲へ流れる方向は季節でも変わります
- 清掃・吸い殻の回収を誰がどの頻度で行うか。運用が決まっていない喫煙場所は、結果的に周辺の環境を悪化させます
- 夜間・閉館時間帯の扱い。施錠するのか、開放したままにするのか
- 照明・防犯カメラの要否と、その運用ルール
掲示する標識については、紛らわしい標識の掲示や標識の汚損等が禁止され、罰則の対象とされています(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。どの標識がどの意味を持つかは 喫煙所の標識・ピクトグラムの解説 に整理しています。制度全体の枠組みは 改正健康増進法の解説記事 をご覧ください。周辺にすでにどのような喫煙所があるかは モットスイタイの喫煙所マップ で確認できます。近隣に十分な数の喫煙所がある場合、自前で設けるより案内に徹するという選択肢も現実的です。
「作らない」という選択と、その場合にやること
屋外喫煙場所を設けない判断も、当然ありえます。設置と維持には費用と手間がかかり、位置によっては周辺への影響を避けきれないこともあるためです。ただし「敷地内では吸えません」で情報提供を終えると、施設の出入口付近や隣接する路上に人が滞留し、今度は近隣からの申し出という形で戻ってくることがあります。そのため、設けない場合ほど「最寄りでどこが使えるか」の案内が重要になります。館内表示・従業員の案内・ウェブサイトの施設案内の 3 か所に近隣の喫煙所の情報を置いておくと、問い合わせ対応の負荷も下がります。路上喫煙の制限は自治体ごとに異なるため、案内文をつくるときは所在地の自治体の公式情報で確認してください。
20 歳未満の立入りと従業員の扱い
改正健康増進法では、20 歳未満の人については、たとえ喫煙を目的としない場合であっても喫煙エリアへ一切立入禁止とされています。これは従業員であっても同様です(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。屋外の喫煙場所であっても、清掃や吸い殻の回収を担当する人員の年齢、アルバイトを含む従業員への周知、掲示の内容を設計段階で決めておく必要があります。
費用と助成制度:対象は「屋内の喫煙室」であることに注意
厚生労働省は受動喫煙防止対策助成金を設けています。同省のページによると、対象は「労働者災害補償保険の適用事業主であって、中小企業事業主(健康増進法第 28 条の第二種施設を営む者に限る)」であること、助成率は工費・設備費・備品費・機械装置費などの「3分の2(主たる業種の産業分類が飲食店以外は2分の1)」、「上限 100 万円」とされています。対象は「一定の要件を満たす専用喫煙室、指定たばこ専用喫煙室の設置に必要な経費」と記載されています。また、同ページには「令和8年度の申請受付を開始しました。申請期日は令和9年1月 31 日です。※申請額が予算に達した場合、申請期日より前に申請を締め切る予定です。」と案内されています(出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html)。
ここで注意したいのは、記載されている対象が屋内の喫煙室(専用喫煙室・指定たばこ専用喫煙室)である点です。屋外の喫煙場所が対象になるかどうかは、本記事では断定しません。最新の要件・対象・締切は上記の厚生労働省のページで確認し、必要に応じて所管の労働局にお問い合わせください。自治体が独自の補助制度を設けている場合もあります。
設置後の運用と情報発信
設置して終わりではなく、清掃頻度・吸い殻の回収・標識の劣化点検・苦情の受付方法まで含めて運用として設計しておくと、長く使える喫煙場所になります。集合住宅で同じ検討をする場合の進め方は 管理会社・管理組合のための喫煙マナー対応実務、宿泊施設で運用を整える場合は 民泊・小規模宿の禁煙運用 にまとめました。基本的なマナーの説明を掲示に転記したい場合は 喫煙マナーの基本 が使えます。地域の喫煙環境そのものについて自治体に意見を出したい場合の進め方は 近所の喫煙環境への要望はどう出すか をご覧ください。
屋外の喫煙場所は、置く場所と運用次第で「周辺の環境を守る仕組み」にも「新しい苦情の発生源」にもなります。設計段階で所管窓口に相談し、決めたことを掲示と運用ルールに落とし込むことが、結果的にいちばん手戻りの少ない進め方です。
施設の屋外喫煙場所を検討する 5 ステップ
施設区分の確認から要件の整理、場所の選定、所管窓口への相談、運用ルールの整備まで、実務で進めやすい順序に整理した手順。
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ステップ 1
自分の施設が第一種か第二種かを確認する
健康増進法第 28 条第 5 号・第 6 号の定義に照らして、施設区分を確認します。学校・病院・児童福祉施設・行政機関の庁舎などは第一種施設にあたり、屋外喫煙場所の位置づけが第二種施設とは異なります。
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ステップ 2
適用される要件を条文で確認する
第一種施設の場合は、法第 28 条第 13 号の「区画」と、施行規則第 15 条第 2 項の「標識の掲示」「利用者が通常立ち入らない場所への設置」を確認します。第二種施設の場合は、第 27 条第 1 項・第 2 項の配慮義務を前提に検討します。
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ステップ 3
候補地を出入口・給気口・動線と重ねて評価する
出入口や自動ドアからの距離、給気口や窓の位置、来訪者の主要動線、隣接する敷地や住戸との関係、20 歳未満が立ち入る区域との距離を図面上で重ねて確認し、候補地を絞り込みます。
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ステップ 4
所管窓口に相談してから着工する
計画が要件を満たすかどうかの判断は、所管の保健所・都道府県等の窓口に相談します。自治体が条例で上乗せの規制を設けている場合もあるため、着工前に確認しておくと手戻りを避けられます。
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ステップ 5
掲示と運用ルールをセットで決める
標識の内容と設置位置、清掃と吸い殻回収の担当と頻度、夜間の扱い、20 歳未満の立入禁止の周知、苦情の受付方法を文書化します。標識の劣化や汚損の点検も運用に組み込みます。
よくある質問
Q.特定屋外喫煙場所の要件は何ですか?
A.健康増進法第 28 条第 13 号は、第一種施設の屋外の場所の一部の場所のうち、管理権原者によって区画され、厚生労働省令で定める措置がとられた場所と定めています。同法施行規則第 15 条第 2 項は、その措置として「一 喫煙をすることができる場所である旨を記載した標識を掲示すること。二 第一種施設を利用する者が通常立ち入らない場所に設置すること。」を挙げています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103 / https://laws.e-gov.go.jp/law/415M60000100086)。
Q.飲食店やオフィスビルの屋外にも同じ要件が適用されますか?
A.「特定屋外喫煙場所」は、第 28 条第 13 号が「第一種施設の屋外の場所の一部の場所」と定義しているとおり、第一種施設についての仕組みです。第二種施設については、第 29 条第 1 項第 2 号が喫煙禁止場所を「屋内の場所」としています。ただし第 27 条第 2 項の配慮義務は、喫煙できる場所を定めようとする管理権原者に及びます。自治体の上乗せ条例の有無も含め、所管窓口にご確認ください。
Q.施設の入口の脇に灰皿を置くのは問題ありますか?
A.第一種施設では、施行規則第 15 条第 2 項第 2 号が「第一種施設を利用する者が通常立ち入らない場所に設置すること」を求めているため、入口周辺は要件との関係で見直しの対象になります。第二種施設でも、第 27 条第 2 項が「望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならない」と定めています。個別の適否は所管の保健所等にご確認ください。
Q.喫煙場所の設置に使える助成金はありますか?
A.厚生労働省の受動喫煙防止対策助成金があります。同省のページでは、対象を労災保険の適用事業主である中小企業事業主(健康増進法第 28 条の第二種施設を営む者に限る)とし、助成率は 3 分の 2(主たる業種の産業分類が飲食店以外は 2 分の 1)、上限 100 万円、対象は一定の要件を満たす専用喫煙室・指定たばこ専用喫煙室の設置に必要な経費と記載されています。令和 8 年度の申請受付が開始され、申請期日は令和 9 年 1 月 31 日とされています(出典: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html)。屋外喫煙場所が対象かどうかは同ページと所管の労働局でご確認ください。
Q.喫煙場所を作らない場合、施設側は何をすればよいですか?
A.「敷地内では吸えません」で終えると、出入口付近や隣接する路上に人が滞留し、近隣からの申し出につながることがあります。館内表示・従業員の案内・ウェブサイトの 3 か所に、最寄りで利用できる喫煙所の情報を置いておくと、問い合わせ対応の負荷も下がります。路上喫煙の制限は自治体ごとに異なるため、所在地の自治体の公式情報をご確認ください。
