喫煙所はなぜ減り続けるのか【2026】法律・設備基準・需要の変化を一次資料で整理
目次
はじめに:本記事の前提と免責
本記事は、厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙。」(https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/)、e-Gov 法令検索の健康増進法(https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)、財務省「たばこ税等に関する資料」(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d09.htm)を一次情報源として、2026 年 8 月時点で確認できた内容だけを第三者の立場で整理したものです。特定の自治体・施設・事業者の判断の是非を論じるものではなく、個別の施設に喫煙所があるかどうかを保証するものでもありません。制度は改正され、施設の運用も変わりますので、最新は必ず公式情報でご確認ください。喫煙できるエリアには、20 歳未満の方は喫煙を目的としない場合であっても立ち入れません(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。本記事は喫煙を推奨するものではありません。
まず前提:何が「減った」と語られているのか
「喫煙所が減りすぎ」という言葉が指すものは、実は一つではありません。駅前や商業施設の屋外にあった灰皿がなくなったこと、オフィスビル内の喫煙室が閉鎖されたこと、飲食店の店内で吸えなくなったこと、路上で吸える範囲が狭まったこと——これらは根拠となる制度も、判断している主体も違います。まとめて一つの原因に還元すると事実からずれてしまうため、本記事では制度ごとに分けて整理します。
なお、全国の喫煙所の設置数・撤去数の推移を示す公的な統計は、本記事の調査時点(2026 年 8 月)では確認できませんでした。したがって本記事は「全国で何か所減った」といった数値は扱わず、確認できた法令・公的資料の内容と、そこから導ける範囲の説明にとどめます。
要因① 屋内は原則禁煙、第一種施設は敷地内禁煙になった
改正健康増進法は 2020 年 4 月 1 日に全面施行され、多数の利用者がいる施設、旅客運送事業船舶・鉄道、飲食店等において屋内が原則禁煙となりました。さらに、学校・病院・児童福祉施設等、行政機関の庁舎、旅客運送事業自動車・航空機については敷地内禁煙となり、屋内に喫煙室等の設備を設けることができません。ただし、こうした第一種施設の屋外には、必要な措置が取られた場所に限り喫煙場所を設けることができます(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。
この「必要な措置が取られた場所」は、健康増進法第 28 条で「特定屋外喫煙場所」として定義されています。条文では、第一種施設の屋外の場所の一部のうち、管理権原者によって区画され、喫煙できる場所である旨の標識の掲示など、厚生労働省令で定める受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた場所とされています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。つまり「敷地内禁煙だから屋外にも一切置けない」のではなく、区画と標識を含む要件を満たすことが条件になっている、という構造です。
要因② 喫煙禁止場所には喫煙器具・設備を「置けない」
灰皿がなくなった理由として、条文上もっとも直接的なのが健康増進法第 30 条第 1 項です。同項は、特定施設等の管理権原者等に対し、当該施設の喫煙禁止場所に「専ら喫煙の用に供させるための器具及び設備を喫煙の用に供することができる状態で設置してはならない」と定めています。そして第 32 条第 1 項は、これに違反して設置されている場合に、都道府県知事が期限を定めて器具・設備の撤去その他の措置をとるべきことを勧告できるとし、同条第 2 項は、期限内に従わなかったときにその旨を公表できるとしています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。
厚生労働省の整理では、義務違反時には指導・助言、勧告・公表・命令を経て過料が科されることがあるとされ、喫煙器具・設備等の撤去等については 50 万円以下、喫煙禁止場所における喫煙については命令に違反した場合に 30 万円以下の過料が示されています(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。施設の管理者が灰皿を撤去する判断は、こうした法令上の枠組みを踏まえたものである、というのが条文から読み取れる範囲です。
要因③ 喫煙室には技術的基準と「維持する義務」がある
屋内に喫煙室を残す選択をした場合も、設備の要件があります。厚生労働省が示すたばこの煙の流出防止にかかる技術的基準は、(ⅰ)出入口において室外から室内に流入する空気の気流が 0.2 m 毎秒以上であること、(ⅱ)たばこの煙が室内から室外に流出しないよう壁・天井等によって区画されていること、(ⅲ)たばこの煙が屋外又は外部に排気されていること、の 3 点です(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。
さらに健康増進法第 33 条は、喫煙専用室を設置した第二種施設等の管理権原者に対し、その構造及び設備を厚生労働省令で定める技術的基準に適合するように維持しなければならないと定めています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。つまり、喫煙室は「一度作れば終わり」ではなく、基準に適合した状態を保ち続けることが求められる設備です。国は事業者向けに受動喫煙防止対策助成金などの財政支援と、特別償却・税額控除といった税制措置を用意しています(出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html)。支援制度が設けられていること自体が、設置と維持に相応の負担が伴うという前提を示しています。
- 喫煙専用室: 喫煙可・飲食等は不可。施設の一部に設置でき、一般的な事業者が設置可能
- 加熱式たばこ専用喫煙室: 加熱式たばこに限定・飲食等は可能。経過措置として設置可能
- 喫煙目的室: 喫煙可・主食を除く飲食等は可能。喫煙目的施設に限定
- 喫煙可能室: 喫煙可・飲食等も可能。既存特定飲食提供施設が設置可能(経過措置)
- いずれの喫煙室も 20 歳未満の立ち入りは禁止(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/smoking_room/)
要因④ 需要側も長期的に変化している
法令だけでなく、たばこの消費量そのものも長期的に変化しています。財務省の資料によると、紙巻たばこの販売数量は平成 8 年度の 3,483 億本をピークに年々減少している一方、紙巻たばこ以外の製造たばこの割合は増加しています。また、国と地方を合わせたたばこ税等の税収の合計は、概ね 2 兆円程度で推移しているとされています(出典: 財務省 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d09.htm。販売数量は日本たばこ協会調べ)。
同じ場所に喫煙設備を維持するかどうかは、施設ごとの利用状況にも左右されます。この需要側の変化を、小売の現場の側から見た記事として 街のたばこ屋はなぜ減ったのかを一次資料で追った記事 も用意しました。価格そのものの推移については たばこの価格をまとめた記事 をご覧ください。
要因⑤ 屋外は自治体の条例が重なる
屋外については、健康増進法とは別に、各自治体が路上喫煙を制限する条例を定めている場合があります。対象区域・規制の内容・過料の有無や金額は自治体ごとに異なり、同じ市区町村内でも区域によって扱いが違うことがあります。本記事では個別の金額を記載しません。お出かけ前に、その自治体の公式情報を必ずご確認ください。
あわせて、健康増進法第 27 条第 1 項は「何人も、……喫煙禁止場所以外の場所において喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない」と定めています。同条第 2 項は、管理権原者が喫煙できる場所を定めようとするときに、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならないとしています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。屋外の喫煙場所の位置や運用が見直される背景には、この配慮義務の考え方があります。
確認できなかったこと(本記事で断定しない論点)
- 全国の喫煙所の設置数・撤去数の推移: 公的な統計を本記事の調査時点で確認できませんでした
- 感染症の流行が喫煙所の数に与えた影響: 全国的な増減を示す公的資料を確認できませんでした
- 苦情の件数と撤去の関係: 全国を対象にした公的な集計を確認できませんでした
- 喫煙室 1 か所あたりの設置費用・維持費用の相場: 公的な統計を確認できませんでした
- 個別施設の喫煙所の有無: 施設の方針や工事により変わるため、施設公式・現地の標識でご確認ください
これらは「存在しない」という意味ではなく、本記事の基準(一次情報で確認できたものだけを書く)を満たす資料に到達できなかった、という意味です。数字を伴う主張は、出典が確認できたものだけを記載しています。
減っただけではない:法律は「環境の整備」も求めている
見落とされがちですが、健康増進法第 25 条は「国及び地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、受動喫煙の防止に関する意識の啓発、受動喫煙の防止に必要な環境の整備その他の受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない」と定めています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。「環境の整備」には、吸わない人が煙に触れずに済む状態をつくることが含まれ、区画された指定喫煙所を設けることもその手段の一つとして位置づけられます。
実際、屋外の指定喫煙所や、区画された喫煙ブースを新たに設ける動きは各地にあります。制度の方向は「どこでも自由に吸える」から「吸う場所と吸わない場所を分ける」への移行であり、吸える場所が完全になくなることを前提にした設計にはなっていません。だからこそ、いまどこが指定された場所なのかを、その都度確かめる習慣が実用的です。
いま吸える場所をどう見つけるか
実際に外出先で困ったときは、記憶や勘に頼らず、指定された場所を地図で確認するのが確実です。モットスイタイの喫煙所マップ では、現在地の周辺から喫煙できる場所を探せます。制度の全体像を先に押さえたい場合は 改正健康増進法の解説、屋外で気をつける点は 自治体別の路上喫煙ルールの記事、店頭の標識の見分け方は 喫煙所の標識・ピクトグラムの解説 が対応しています。
- 出発前に、目的地の周辺で指定された喫煙場所があるかを地図で確認しておく
- 施設に入る前に、入口の標識で喫煙室の有無と種類を確認する(標識の掲示は義務づけられています)
- 第一種施設(学校・病院・児童福祉施設等・行政機関の庁舎)は敷地内禁煙が原則。敷地内では吸わない
- 屋外は自治体の条例が重なる場合がある。区域と時間帯の扱いは自治体公式で確認する
- 喫煙できるエリアには 20 歳未満は立ち入れない。同行者がいる場合はその点も踏まえて場所を選ぶ
おわりに
「喫煙所が減った」という体感の裏側には、屋内原則禁煙と敷地内禁煙という区分の導入、喫煙禁止場所への喫煙器具の設置禁止、喫煙室の技術的基準と維持義務、そして需要側の長期的な変化がそれぞれ関わっています。どれか一つを犯人にする話ではなく、いずれも公開された法令と公的資料で確認できる事実です。同時に、法律は「受動喫煙の防止に必要な環境の整備」も求めています。吸う人も吸わない人も、決められた場所の情報を共有できることが、摩擦を減らす一番の近道だと考えています。日本全体の喫煙事情の見取り図は 日本の喫煙所事情とマナーの完全ガイド、基本的な配慮は 喫煙マナーの基本 にまとめています。
「喫煙所が減った」時代に吸える場所を確かめる 5 ステップ
法令上の区分を踏まえて、外出先で指定された喫煙場所を確認するための手順を、実際に進めやすい順に整理しました。
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ステップ 1
施設の区分をまず確認する
学校・病院・児童福祉施設等・行政機関の庁舎は第一種施設で敷地内禁煙です。これらの敷地では吸わない前提で行動します。飲食店・事務所・ホテル等は第二種施設で、屋内は原則禁煙です。
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ステップ 2
入口の標識を見る
喫煙できる設備がある施設には標識の掲示が義務づけられています。「喫煙専用室あり」「加熱式たばこ専用喫煙室あり」「喫煙目的室あり」「喫煙可能室あり」で、吸えるたばこの種類と飲食の可否が変わります。
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ステップ 3
屋外は自治体の条例を確認する
路上喫煙を制限する条例は自治体ごとに区域も内容も異なります。過料の有無や金額も一律ではありません。訪れる自治体の公式サイトで、対象区域と時間帯の扱いを確認しておきます。
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ステップ 4
地図で指定喫煙所を先に押さえる
目的地に着いてから探すと選択肢が限られます。移動前にモットスイタイの喫煙所マップで、目的地周辺の指定された喫煙場所と、そこまでの所要時間を確認しておきます。
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ステップ 5
同行者と 20 歳未満の立ち入り禁止を踏まえて場所を選ぶ
喫煙できるエリアには、喫煙を目的としない場合でも 20 歳未満は立ち入れません。子ども連れのときは、待ち合わせ場所を喫煙エリアの外に決めておくと動きやすくなります。
よくある質問
Q.喫煙所はなぜ減ったのですか?
A.2020 年 4 月 1 日に全面施行された改正健康増進法により、多数の人が利用する施設の屋内は原則禁煙、学校・病院・児童福祉施設等・行政機関の庁舎は敷地内禁煙となりました(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。加えて健康増進法第 30 条第 1 項が喫煙禁止場所への喫煙器具・設備の設置を禁じ、第 32 条で撤去等の勧告ができるとされています。紙巻たばこの販売数量が平成 8 年度をピークに減少していることも背景の一つです。
Q.駅前の灰皿がなくなったのはなぜですか?
A.個別の場所について理由を断定することはできません。制度上は、健康増進法第 30 条第 1 項が喫煙禁止場所に喫煙用の器具・設備を喫煙に使える状態で設置することを禁じ、第 32 条で都道府県知事が撤去等を勧告できるとしています(出典: e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103)。屋外については自治体の条例が重なる場合もあります。詳細はその場所を管理する事業者・自治体の公式情報をご確認ください。
Q.喫煙室を作るのはそんなに大変なのですか?
A.厚生労働省が示す技術的基準では、出入口の気流が 0.2 m 毎秒以上であること、壁・天井等で区画されていること、たばこの煙が屋外又は外部に排気されていることが求められます(出典: https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/)。さらに健康増進法第 33 条は、その構造・設備を基準に適合するように維持する義務を定めています。国は受動喫煙防止対策助成金や税制措置による支援制度を用意しています。
Q.喫煙所は今後なくなってしまうのですか?
A.将来を断定することはできません。制度上は、基準を満たす喫煙専用室・加熱式たばこ専用喫煙室・喫煙目的室・喫煙可能室の 4 種類が定められており(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/smoking_room/)、第一種施設でも要件を満たす特定屋外喫煙場所は設置できます。また健康増進法第 25 条は国・地方公共団体に「受動喫煙の防止に必要な環境の整備」を求めています。
Q.喫煙所が見つからないときはどうすればよいですか?
A.路上や禁煙エリアで吸うのではなく、地図で指定された喫煙場所を探すのが確実です。モットスイタイの喫煙所マップで現在地の周辺から探せます。第一種施設の敷地内では喫煙できません。屋外は自治体の条例が適用される区域があるため、区域と時間帯の扱いは自治体の公式情報をご確認ください。
