受動喫煙防止対策助成金まとめ【2026】対象・助成率・上限額・申請の流れ
目次
はじめに:本記事の前提と免責
本記事は、厚生労働省「受動喫煙防止対策助成金」ページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html)、同「『受動喫煙防止対策助成金』のご案内(令和 8 年度版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/001738448.pdf)、および同「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令和元年 7 月 1 日基発 0701 第 1 号 https://www.mhlw.go.jp/content/000524718.pdf)を一次情報源として、2026 年 8 月 18 日時点で公開されている内容を整理したものです。助成金は年度ごとに公募・要件・予算が変わる制度であり、本記事の記載時点以降に変更される可能性があります。金額・期日・要件は必ず厚生労働省の公式ページと交付要綱・交付要領でご確認ください。本記事は特定の申請が採択されるかどうかを判断するものではなく、個別の申請可否や税務の取り扱いについて助言するものでもありません。本記事は喫煙を推奨するものではありません。
制度の概要:何のための助成金か
改正健康増進法により 2020 年 4 月から原則屋内禁煙が義務化されたことを受け、職場での受動喫煙防止対策に取り組む中小企業事業主に対して、費用の一部を支援するために設けられているのがこの助成金です。厚生労働省の案内は「職場での受動喫煙防止対策を行うにあたっては、既存特定飲食提供施設において費用の一部を支援する『受動喫煙防止対策助成金』が適用になるため、ぜひご活用ください」と説明しています(出典: 厚生労働省「令和 8 年度版」案内 https://www.mhlw.go.jp/content/001738448.pdf)。
ここで重要なのは、令和 8 年度版の案内では助成の対象が「健康増進法で定める既存特定飲食提供施設に限ります」と明記されている点です。過去の年度の解説記事には対象範囲が異なる記述が残っていることがありますが、申請にあたっては必ずその年度の公式資料を確認してください。既存特定飲食提供施設とは、健康増進法に規定する第二種施設のうち、飲食店・喫茶店その他設備を設けて客に飲食をさせる営業が行われる施設で、①2020 年 4 月 1 日時点で現に存する飲食店、②資本金 5,000 万円以下、③客席面積 100 ㎡以下の 3 要件を満たすものとされています(出典: 同案内)。
対象になる事業主:4 つの条件をすべて満たすこと
令和 8 年度版の案内は、次の(1)〜(4)すべてに該当する事業主が対象である、としています(出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/001738448.pdf)。
- (1)健康増進法で定める既存特定飲食提供施設を営むこと(①2020 年 4 月 1 日時点で現に存する飲食店 ②資本金 5,000 万円以下 ③客席面積 100 ㎡以下)
- (2)労働者災害補償保険の適用を受けること
- (3)業種ごとの規模要件に該当する中小企業事業主であること。小売業(小売業、飲食店、配達飲食サービス業)は常時雇用する労働者数 50 人以下または資本金・出資の総額 5,000 万円以下、サービス業(物品賃貸業、宿泊業、娯楽業、医療・福祉、複合サービスなど)は 100 人以下または 5,000 万円以下、卸売業は 100 人以下または 1 億円以下、その他の業種(農林漁業、建設業、製造業、運輸業、金融業、保険業など)は 300 人以下または 3 億円以下。労働者数か資本金等のどちらか一方の条件を満たせば中小企業事業主となります
- (4)事業場内において、措置を講じた区域以外を禁煙とすること
(4)は見落とされやすい条件です。喫煙室を作るだけでなく、その区域以外は禁煙とすることが前提になっています。また、交付は事業場単位とし、1 事業場につき 1 回のみとされ、過去にこの助成金を交付された事業場は申請できません。同じ事業場で複数の場所に措置を講じる場合は、1 件の申請としてまとめて申請することとされています(出典: 同案内)。
助成の対象になる措置と技術的基準
令和 8 年度版の案内が挙げる対象措置は次の 2 つです。いずれも既存特定飲食提供施設に限られます。
- ①喫煙専用室の設置・改修(既存特定飲食提供施設)… 喫煙以外の使用は不可
- ②指定たばこ専用喫煙室の設置・改修(既存特定飲食提供施設)… 喫煙以外の使用が可能(加熱式たばこ専用で、飲食等ができる室)
- 共通の要件として、入口における風速が 0.2 m/秒以上であること、煙が室内から室外に流出しないよう壁・天井などによって区画されていること、煙を屋外または外部の場所に排気することが挙げられています
喫煙専用室と指定たばこ専用喫煙室の違い、そして喫煙可能室・喫煙目的室を含めた 4 種類の使い分けは、店舗の運営方針そのものに関わります。全体像は 改正健康増進法の解説 にまとめました。飲食店側の実情については 居酒屋の喫煙事情 や 喫煙できるカフェの探し方 もあわせてご覧ください。
助成率・上限額・単位面積あたりの経費上限
助成対象経費は、上記①〜②の措置にかかる工費、設備費、備品費、機械装置費などです。助成率は「主たる産業分類が飲食店の事業者は 2 / 3、それ以外は 1 / 2」、上限額は 100 万円とされています。複数の措置を同時期に行う場合も、合計の上限額は 100 万円です(出典: 厚生労働省「令和 8 年度版」案内 https://www.mhlw.go.jp/content/001738448.pdf)。
あわせて留意すべきなのが、単位面積当たりの助成対象経費の上限額です。案内は、事業計画の内容が技術的および経済的な観点から妥当であることが必要であるとし、経済的な観点の目安として、喫煙専用室・指定たばこ専用喫煙室などの設置・改修について 60 万円/㎡ を上限として定めています。これを超える場合は、合理的な理由があると都道府県労働局長が認める場合を除き、単位面積当たりの助成対象経費上限額までで交付決定を行うとされています。案内が示す例では、主たる産業分類が飲食店以外の事業場が 3 ㎡の喫煙専用室の設置・改修を行う計画の場合、合理的な理由が認められない限り、助成対象経費として 3 ㎡ × 60 万円/㎡=180 万円まで(助成額にして 90 万円まで)しか認められないとされています。
申請から受領までの流れ
令和 8 年度版の案内が示す手続きの流れは次のとおりです。順序を誤ると助成を受けられなくなる箇所があるため、特に「交付決定通知書を受領してから工事に着手する」という点は最初に押さえておくべきポイントです。
- 申請内容の検討 … 交付要綱などを読んで制度を把握し、申請書を作成。不明点は所轄の都道府県労働局(労働基準部健康課または健康安全課)や相談支援業務の相談ダイヤルへ
- 交付申請 … 申請書類を 2 部ずつ、所轄の労働局に提出。労働局での審査期間は原則 1 か月以内
- 交付決定通知書受領 … この通知書を受領してから工事に着手。原則、施工業者との契約や支払いも受領後に行う
- 工事の発注・施工 … 交付決定の内容に従って実施。変更がある場合は「交付決定内容変更承認申請書」を提出して承認を受ける
- 工事費用の支払い … 完了後に費用を支払い、領収書と明細を受領。分割払い、親会社の支払い、リース契約による支払いの場合は助成金を交付できないとされています
- 事業実績報告 … 報告書類を 2 部ずつ提出。交付決定の際に指定された期日までに行う
- 交付額確定通知書受領 → 請求書の提出 → 助成金の受領 … 請求書に振込先口座等を記載して提出
- その後の手続き … 消費税仕入控除税額が確定したら、遅くとも助成事業完了日の属する年度の翌々年度 6 月 30 日までに所定の様式で提出。設備の運用状況等について毎年の実施状況報告も必要
なお、申請については都道府県労働局への書類提出のほか、電子申請の受付も可能とされています(出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/001738448.pdf)。
交付申請に必要な書類
令和 8 年度版の案内が挙げる交付申請の必要書類は次の 10 種類です(*印の書類には所定の様式があります)。工事前の写真に撮影時期の条件が付いている点、見積書が 2 業者以上必要な点は、準備の段取りに影響するため早めに確認しておくと安心です。
- 受動喫煙防止対策助成金交付申請書*/受動喫煙の防止に係る事業計画*
- 交付要件に該当する旨及び不交付要件には該当しない旨の申立を行う書類*
- 措置を講じる場所の工事前の写真(申請日から 3 か月以内に撮影したもの)
- 設置を予定している喫煙室や換気装置の場所など助成事業の詳細を確認できる資料/講じる措置が要件を満たして設計されていることが確認できる資料
- 事業場の室内とそれに準ずる環境で、措置を講じる区域以外での喫煙を禁止する旨を説明する書類
- 講じる措置に関する施工業者からの見積書の写し(2 業者以上必要)
- 事業開始の特例に係る申請書(交付決定前に契約、支払などを行う場合のみ)
- その他都道府県労働局長が必要と認める書類(既存特定飲食提供施設であることを確認できる資料等を含む)
申請前に押さえておきたい注意点
案内には「申請に当たっての注意点」として、この助成金が「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の対象であり厳格な運用が求められる制度であること、交付要綱・交付要領その他の規定類をよく読んで制度の内容を理解してから申請することが記されています。また、偽りやその他の不正行為により助成金の交付を受けた場合や、交付決定の内容や付された条件に違反した場合は、助成金の返還を求めることがあり、5 年以下の懲役または 100 万円以下の罰金に処せられることがあるとされています(出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/001738448.pdf)。
さらに、受付は原則申請順とし、申請額が予算額に到達した場合は申請受付を締め切る予定であること、助成金を受けた年度終了後 5 年以内に事業の廃止等に伴い譲渡または廃棄する場合は原則事前の承認が必要であることも案内されています。締切前でも受付が終了しうる制度である以上、検討している場合は早めに所轄の労働局に相談するのが実務上の要点になります。
助成金以外に使える支援
厚生労働省のガイドラインは、受動喫煙防止対策に対する支援として、助成金に関する事項は事業場の所在地を所管する都道府県労働局労働基準部健康主務課へ、受動喫煙防止対策の技術的な相談および「たばこの煙の濃度等の測定機器の無料貸出し」は厚生労働省ホームページで最新の問合せ先を確認すること、と案内しています(出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000524718.pdf)。測定機器の無料貸出しは、設置後の効果を確認したい場合にも使える選択肢です。相談先の全体像は 職場の受動喫煙はどこに相談するか にまとめました。
また、厚生労働省の受動喫煙対策サイトは、事業者向けの支援措置として「受動喫煙防止対策助成金」(財政支援)とあわせて「中小企業経営強化税制」(税制措置)を挙げ、詳細は中小企業庁のページ(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/index.html)を参照するよう案内しています(出典: 厚生労働省 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/support/)。税制措置の適用要件・適用期限・控除の内容は年度によって変わるため、本記事では具体的な数値を記載しません。適用の可否を含め、必ず中小企業庁の公式ページと税理士等の専門家にご確認ください。
おわりに:分煙は「客を選ばない」ための投資でもある
喫煙室の設置は、喫煙する客と喫煙しない客のどちらかを選ぶための工事ではなく、両方を受け入れるための設備投資という見方ができます。屋内に喫煙場所を設けない判断をした店舗でも、近隣の指定喫煙所を モットスイタイの喫煙所マップ で案内できるようにしておけば、店先で吸われて近隣から苦情が来るという別のトラブルを減らしやすくなります。店頭に掲示する標識の種類と読み方は 喫煙所の標識・ピクトグラムの記事、従業員側の環境整備については 職場のにおい問題の解きほぐし方 もご覧ください。最新の公募状況は、必ず厚生労働省の公式ページでご確認ください。
受動喫煙防止対策助成金を申請する 5 ステップ
令和 8 年度版の案内が示す手続きの流れを、実務で詰まりやすい順序の要点とあわせて整理したもの。金額・期日は申請前に必ず公式ページで再確認してください。
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ステップ 1
対象要件に該当するか確認する
既存特定飲食提供施設を営むこと、労働者災害補償保険の適用を受けること、業種ごとの中小企業事業主の規模要件に該当すること、措置を講じた区域以外を禁煙とすることの 4 条件をすべて満たすかを確認します。
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ステップ 2
所轄の都道府県労働局に相談し、計画を立てる
交付要綱などを読んで制度を把握し、所轄の労働局(労働基準部健康課または健康安全課)に相談します。喫煙専用室にするか指定たばこ専用喫煙室にするかで、飲食の可否など運用が変わります。
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ステップ 3
見積りと書類をそろえて交付申請する
施工業者 2 社以上の見積書の写し、申請日から 3 か月以内に撮影した工事前の写真などをそろえ、申請書類を 2 部ずつ所轄の労働局に提出します。審査期間は原則 1 か月以内とされています。
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ステップ 4
交付決定通知書を受領してから着工する
通知書を受領してから工事に着手します。契約や支払いも原則として受領後です。分割払い、親会社の支払い、リース契約による支払いでは助成金を交付できないとされているため、支払方法も事前に確認します。
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ステップ 5
実績報告から受領、その後の報告まで行う
工事完了後に費用を支払い、領収書と明細を受領して事業実績報告を提出します。交付額確定通知書の受領後、請求書を提出して助成金を受け取ります。その後も毎年の実施状況報告が必要です。
よくある質問
Q.受動喫煙防止対策助成金は令和 8 年度も申請できますか?
A.厚生労働省のページには「令和 8 年度の申請受付を開始しました。申請期日は令和 9 年 1 月 31 日です。」と記載されています(2026 年 8 月 18 日確認。出典: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html)。ただし「申請額が予算に達した場合、申請期日より前に申請を締め切る予定です」ともされているため、検討中の場合は早めに所轄の都道府県労働局にご相談ください。最新の状況は必ず公式ページでご確認ください。
Q.助成率と上限額はいくらですか?
A.令和 8 年度版の案内によれば、助成対象経費は措置にかかる工費・設備費・備品費・機械装置費などで、助成率は主たる産業分類が飲食店の事業者は 2 / 3、それ以外は 1 / 2、上限額は 100 万円です。あわせて単位面積当たりの助成対象経費の上限額が 60 万円/㎡ と定められています(出典: https://www.mhlw.go.jp/content/001738448.pdf)。
Q.飲食店以外でも対象になりますか?
A.令和 8 年度版の案内は、助成の対象となる措置について「健康増進法で定める既存特定飲食提供施設に限ります」と明記しており、対象事業主の条件にも既存特定飲食提供施設を営むことが挙げられています。既存特定飲食提供施設は、2020 年 4 月 1 日時点で現に存する飲食店で、資本金 5,000 万円以下かつ客席面積 100 ㎡以下のものとされています(出典: https://www.mhlw.go.jp/content/001738448.pdf)。個別の該当可否は所轄の都道府県労働局にご確認ください。
Q.工事はいつ始めてよいのですか?
A.令和 8 年度版の案内は、交付決定通知書を受領してから工事に着手すること、原則として施工業者との契約や支払いも交付決定通知書を受領してから行うことを求めています。交付決定前に契約・支払などを行う場合は「事業開始の特例に係る申請書」が必要とされています(出典: https://www.mhlw.go.jp/content/001738448.pdf)。
Q.喫煙室の技術的な相談や空気の測定はできますか?
A.厚生労働省のガイドラインは、受動喫煙防止対策の技術的な相談と「たばこの煙の濃度等の測定機器の無料貸出し」について、厚生労働省ホームページで最新の問合せ先を確認することとしています。助成金に関する事項は、事業場の所在地を所管する都道府県労働局労働基準部健康主務課が窓口とされています(出典: https://www.mhlw.go.jp/content/000524718.pdf)。
